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二度の不登校を経て、動画編集者に。15歳の少年が旅をして見つけた「自分の生き方」

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二度の不登校を経て、動画編集者に。15歳の少年が旅をして見つけた「自分の生き方」

こんにちは、ジモコロ編集長の柿次郎です。みなさんは15歳の頃、何をしていましたか?

 

部活動に打ち込んだり、淡い恋愛をしたり。はたまた勉強をがんばったり。

人それぞれ、いろんな生き方があるわけですが、中でも個人的に「この生き方はユニークだ」と思う15歳の少年と出会いました。彼は知り合いの旅に同行していて、その最中に知り合ったんです。

 

その人物が、キョウノオウタくん。

一見、普通の15歳の少年に見えたのですが、会って話をしてみると、いろんな経験をしていて……。

 

オウタくんは、過去に2回ほど不登校で悩んだ時期がありました。しかし、たくさんの大人と会う中で“動画編集”という自分のやりたいことを見つけ、今は一生懸命に動画編集者として活動しています。

 

<オウタくんの経歴>

・小学2年生〜4年生までボクシングジムに通う

・小学4年生〜5年生まで不登校

・野島伸司さんが総合監修する俳優養成学校「ポーラスター東京アカデミー」に受かる

・中学1年で再び不登校に

・中学2年の4月からEVERY DENIMのツアーに参加する

・現在は動画編集者として活動中

 

誰にでも「学校に行きたくない」と思う時期はあるはず。オウタくんは不登校の時期を経て、どうやって自分のやりたいことを見つけたのでしょうか。

 

9月1日が最多 子どもの自殺をどう防ぐ?

9月に学校の新学期が始まって、約3週間。夏休み明けの9月1日は、1年間のうち子どもの自殺が突出して多い日だそうです。長期休暇が終わり、学校に行きたくない子どもが不安定になったり、最悪のケースとして自殺を選んでしまう子どもさえいる。

 

近年では「9月1日問題」と呼ばれ、8月末〜9月に不登校関連の記事がメディアで取り上げられることも増えました。

 

不登校で悩む人も多いなかで、オウタくんの生き方を「こういう道もある」と知ってもらいたい。そう思って、話を聞いてきました。

 

「空白」だった引きこもり時代

「いやー、すごい久しぶりですね。初めて会ったのが1年前くらい?」

「そうですね。柿次郎さんにお会いしたとき、関西弁が初めてだったので驚きました。なんかやたら絡んでくるおじさんがいるなと…」

「初対面から関西ノリを出しちゃってごめんね……(笑)。その時のオウタくんの話がすごく印象的で。動画撮影の機材が欲しくて、自分で近所の空き缶を集めてお金を稼ごうとしたんだよね? 空き缶用のゴミ箱を個人で設置していいか、市役所に相談に行ったり」

「はい。結局、ゴミ箱を置くのもダメで、目標の金額を稼ぐにはすごい量の空き缶が必要なことがわかって諦めたんですけど…。でも、取材の機会をいただけてすごく嬉しいです」

「こちらこそ! 今日はオウタくんの“これまで”について話を聞ければと思っていて。細かいことは気にせず、自由に喋ってもらって大丈夫です。オウタくんは確か小学4年生の頃に不登校になっているんですよね。それまでは普通に学校に?」

 

「はい。不登校になるまでは、すごく学校は楽しかったです。クラスで一番よく喋るようなキャラでしたし、勉強もがんばっていました。小学2年生から4年生までボクシングジムに通っていて、それくらい元気があったんです」

「ボクシングジムに通っていたのは意外……。なんでボクシングだったの?」

「お姉ちゃんに喧嘩で勝ちたいと思ったからです」

「シンプルな理由!(笑)」

「自分はすごく負けず嫌いな性格なんです。それで喧嘩で勝つためにボクシングジムに通い始めました。ただ、スパーリングで相手の鼻に自分のパンチがクリーンヒットしてしまって。気づいたら鼻血がめちゃくちゃ出ていて、それ以来、トラウマになってしまいました」

 

「自分のパンチで誰かを怪我させてしまうかもしれない、って…」

 

「マジなボクサーの考え方だ。そんなに負けず嫌いな性格だったけど、気づいたら不登校になってしまっていた」

「小学4年生のときに、自分のことを『家畜みたいだ』と思った時期があったんです」

「家畜。それはどんな風に?」

みんなと同じご飯を食べて、同じ時間を過ごし、同じ人間が作られていく。そして、大人たちにいつか搾取されていく。そんなことを感じ始めたら気持ち悪くて仕方なくなり、学校に通うことに拒否感が生まれてしまったんです。かなり極端な考えだな、と今となっては思うんですけど……」

「当時のオウタくんには、そんな風に感じられたと」

「はい。それで小学4年生から5年生までの2年間はずっと休んでいて、家に引きこもる生活を続けていました」

「引きこもっていたとき、どんなことしていたの?」

 

「……。それが、ほとんど記憶にないんです」

「まさかの記憶がない。全く覚えていないんですか?」

「一言で表現するなら、空白というか。ただ生きていたんだろうな、って感じです」

「もしかすると外部の刺激が一切なかったから、そうなってるのかもしれないね」

「記憶に残っているのは、ずっとゲームをしていたことくらいです。当時流行っていた妖怪ウォッチのゲームですね。あとは布団に寝転がって、1日中天井を見る。そんな日々を365日過ごしていました」

「両親から学校に行きなさい、と言われることはなかったんですか?」

「不登校を認めてくれていたのか、それとも放任主義だったのか。どちらか分からないのですが、学校に行きなさいと言われることはありませんでした。外に出ないだけで、家では普通に生活していましたし。あと、どちらかと言えば、両親も学校が合わなかったタイプだったみたいで、我慢して通っていたみたいなんです」

「両親もオウタくんと似たような感じだったんですね。オウタくんにもそういう個性があることに対して、お母さんはやっぱりか、と言う感じの反応?」

「そうですね。両親もそこまで驚いていなかったですし、自分も『やっぱりそうか』と思いました」

 

死の恐怖を感じている人が、今を生きている人

「6年生になったら、また学校に通い始めたんですね」

「6年生は先生と周りのクラスメイトに恵まれていて、過ごしやすい環境だったので、年に1日〜2日しか休んでいません。中学1年生でまた不登校になって、その後に『EVERY DENIM』の全国ツアーに同行したんです」

「EVERY DENIMは兄弟でやっているジーンズブランドで、日本全国を車で回りながら、出張販売をしていたんですよね。その旅の時に、僕もオウタくんに出会って。これはどういう経緯で参加を?」

「もともと、姉がEVERY DENIMでインターンをやっていたんです。当時、EVERY DENIMのオンラインサロンで動画の配信をやりたいと話していたらしくて。ちょうど自分が動画編集の勉強をしていたので、姉の紹介で僕もオンラインサロンへ入ることになったんです」

 

写真左がEVERY DENIMの山脇耀平さん、写真右が島田舜介さん。中央にいるのは全国ツアーに同行していたブランドディレクターの赤澤えるさん

 

「約4ヶ月くらい動画配信を手伝っていたんですが、EVERY DENIMの人たちが全国の工場を巡るツアーをすることがわかって。『僕も連れていってください』と頼んだら、『いいよ』と快諾してもらい、一緒に行くことになりました」

「実際、ツアーに参加してみてどうでした?」

「自分が普通に生きてたら会えていない人に会う機会が多くて、すごく刺激的でした。各地の職人さんや一次産業に関わる方々に、彼らが働く現場で会うことができて。それでツアーに参加してみて気づいたことがあるんです。それは死の恐怖を感じている人が、今を生きている人なんだということで」

「ほほう。死を身近に感じている人ってことかな…?」

「死の平行線上に自分がいて、死と並走している人というか。僕が“今を生きているな”と感じる人たちは、そのイメージが強いです」

「オウタくん自身、それまでは死への恐怖を感じずに生きていた?」

ツアーに参加するまでは『いつかは死ぬもの』だと思って、人生を放置しながら生きている感じでした。ただ、死すらも変えてしまいそうな勢いで走っている大人たちに会ってから、自分の考えが変わってきました」

「なるほど。旅で出会ったなかで、誰か象徴的な人はいますか?」

「一緒にツアーをまわった赤澤えるさんは面白い人でした。物事に対する姿勢や熱量がすごいと感じたのと、僕と年齢が倍違うのに子どもとして見てくれていない。それが良い意味でよかったです」

 

赤澤えるさんがTEDに出演し、自身の経験を元に「何も持っていない人が、何かを見つける方法。何かを持っている人が、それを活かせるようになる方法」について語った映像

 

「10代の頃、周りにいる大人って家族と親戚、先生くらいじゃないですか。でも、オウタくんは自ら外に出て、色んな大人に会って、すごく刺激を受けた。僕もジモコロで全国をまわって、色んな人に会って人生観が変わったんですよね。オウタくんの場合、大人になる前にその経験ができたのは貴重だと思います」

 

コミュニティに属し続けることが大事

「ちなみに、オウタくんはなんで動画編集をやろうと思ったんですか?」

「引きこもりだった時代に、脚本家の野島伸司さんが開く俳優養成学校に通っていたんです。姉が勝手に申し込んで、何も知らないまま受けたんですけど、なぜか受かってしまって」

「ジャニーズでよく聞くエピソードだ」

「費用も3カ月で10万円とそれなりの金額がかかるんですが、両親が通わせてくれたんです」

「両親がすごいですね。安い金額ではないから、渋る親もいそうなのに……」

「その学校では即興演技の勉強をして、面白かったんです。でもそれ以上に、一度だけエキストラとして参加した撮影現場で、動画の撮影クルーがすごくカッコよく見えて。そこで演技側から撮影側に興味が移り、動画編集をやるようになりました」

「じゃあ、両親が払ってくれた10万円にも意味があったんですね。それがいまの活動に繋がっている」

「ありがたいことに、知り合いからの紹介でいろんな機会をもらえていて。いまは企業のPR動画や、記事制作の相談をいただくことも徐々に増えてます。いつか仕事にしたいと思っているので、撮影や編集の勉強になってありがたいです」

 

オウタくんがこれまで関わった動画や記事

・小幡和輝さん著書『ゲームは人生の役に立つ』PR動画制作

・株式会社クリスタルロード「TANQ-JOB Z」PR動画制作

・赤澤えるさんへの「不登校」をテーマにしたインタビュー動画制作

・EVERY DENIM山脇さん連載「心を満たす47都道府県の旅」内の写真撮影

・「TANQ-JOB」小幡和輝さんインタビュー記事執筆

 

「オウタくんは引きこもりを経験しながらも、その後の道を自分で作っている気がしてるんですよね」

 

「道かどうかはわからないですけど、もし“学校”というコミュニティに属さないのなら、他のコミュニティに属した方がいい。やっぱり何かのコミュニティに属していないと自分という存在を見つけられない。僕は引きこもっていた時期にそう思いました」

「学生のときは、学校というコミュニティが中心ですよね。あとは家族とか。そこから外れてしまうと、孤立しがちかもしれない」

「だから思いきってEVERY DENIMのオンラインサロンに入ったら、結果的にそれが良い縁につながりました。リアルでもネットでも、どこかのコミュニティに属し続けることは大事なのかなと。ゲームの世界でもいいですし、誰にでもコミュニティに入れる時代だと思うので」

「今はSNSもあるからね。オウタくんとまた会うことになったのも、旅の後にメッセージをくれたのがきっかけでしたし」

「家に引きこもっていると、属しているんだけど属していない感覚になるんです。そのまま社会に出るのは難しい。僕が一番難しかったのがそこで……」

「学校や家庭以外でも、居たいと思える場所にいるのが大事ですよね。でも、それも自分が一歩踏み出さないと見つからない。オウタくんの場合、そのモチベーションはどこにあったんですか?」

暇だと病んでしまうと言いますか……。つらくなってしまう」

「それは分かるなぁ。だから僕も自分を鼓舞して、いろんなことに取り組んで暇な時間を作らないようにしてます」

「引きこもりのときは暇で『死にたい』しか考えてませんでした。最近は動画編集をしているぶん、考える時間がなくなったおかげで生きていられる。死への恐怖感がすごくあるので、それを感じたくなくて、とりあえず行動してる気もします」

「どんどん動いて、関わった人が増えれば『死にたい』からはきっと遠ざかるんじゃないかな?」

 

「みんなと違う道」に満足して走った方がいい

EVERY DENIMとの旅で立ち寄った長野にて。写真中央奥に写るのがオウタくん

 

「不登校の時期も今となっては、自分のためになる時間だった?」

「僕はすごく不器用な人間で、学校に行かないことを選びました。学校へ行っている人は選択肢が100あるとしたら、僕はその4分の1くらいしかなくなってしまった。最初はそれがすごく怖かったんですけど、逆に4分の1だけの狭い道に集中してみたら、案外広いもんだな、と思ったんです

「そのほうがオウタくんに合ってたのかな?」

「そうですね。自分の中ですごく解像度があがったというか。限られた狭い道でも、意外と良いところ、面白いところがたくさん見つかったんです。もちろん、学校に通うなかで自分の道を見つけられる人もたくさんいると思います」

 

「昔は人と同じじゃなきゃダメだと思ってたんですけど、そう考えて生きていると辛いだけ。自分は自分でいいと思って生きるようにしています。旅で出会った大人たちは、みんな他人とは全然違う道を走っていて、それで満足している。満足せずにみんなと同じ道を走るより、満足してみんなと違う道を走った方がいいと思ったんです」

「15歳でその考えを持ってるのはすごい……。僕がその考えに辿り着いたのは30歳になるくらいの頃でしたからね。オウタくんは15歳以降の人生をどう過ごそうと考えているんですか?」

「スタートラインが決まっていないので、スタートラインを見つけるためにも、まずゴールラインを定めないといけないと思っています。そのために何かしらの軸をひとつ持つ。それを見つけるためにも、いろんな所に出て行ければと思っています」

「うんうん。そうだ、時間ができたら、ジモコロの記事を書いてみない?」

「え、嬉しいです! 中学校を卒業するまで原則働くのは禁止らしくて、法律に詳しい人に聞いたら、条件とかがあるみたいなんです。そのあたりがクリアできたら、ぜひ」

「楽しみに待ってますね。EVERY DENIMのツアーみたいに、ジモコロの取材を通じて、いろんな場所でいろんな大人に会えると思うから。 最後に、オウタくんから学校に通えなくて悩んでいる同世代の人に伝えたいことはあるかな?」

「とにかく、後悔しないようにしてほしいです。結局、今の僕も学校に行ったり行けなかったりで。行ってても辛いんですけど、行ってなくても辛い。どっちにしろ辛いので、それなら自分の好きな方を選んで辛い方がいいと思います」

 

おわりに

自分の言葉で、いまの素直な想いを話してくれたオウタくん。取材後、彼のお母さんに「今のオウタくんをどんな風に思いますか?」と聞いたところ、こんなコメントをいただきました。

母親としても、嬉しい気持ちでいっぱいです。息子が不登校になった時は正直不安でした、毎日家に引きこもるような生活が続いてて。

でも今はすごい生き生きとしてるんです。もちろんまだ彼なりに辛いことはあるんでしょうけど、しっかりと向き合えるようになった。

でも、だからと言ってコレが正解かはわからない。だからこそ、色んな人に出会って欲しい。固定的な価値観でいると生きづらいのは私も学んだから。

 

オウタくんは旅を経て、色んな大人に会ってきました。そんな大人たちから届いたオウタくんへの応援コメントも紹介します。

 

『学校は行かなくてもいい』著者 小幡和輝さん

いま定期的に動画制作を依頼しています。出会いはTwitterでDMをくれたところから。 最初はミスもありましたが、どんどん成長していく姿がとても頼もしいです。 どんどんいろんな仕事にチャレンジして、同世代のロールモデルになってください! 応援してます。

 

NPO法人D×P理事長 今井紀明さん

出会ったのは僕がツイッターで不登校の子のかばん持ちを募集した時に「かばん持ちに行きたい」と声をかけてもらい、連れて行きました。対応も丁寧ですし、映像系の企業の方と繋げた時も安心してオウタくんに任せることができました。
10代で特定の活動について注目されてしまうと動きにくくなることもありますが、周りの評価など気にせず自分の興味のままに動いて欲しいです。これからの興味や関心はまだまだ広がっていくと思うので応援してます!

 

EVERY DENIM 山脇耀平さん

旅をともにしたオウタくんについての記事が公開されるとのことで、何より僕自身がとても誇らしい気持ちです!! 彼の心の中心にある、まっすぐな想いがたくさんの人に届き、善き理解者が増え、存在が広まっていくことを心から願っています。
それとともに、自分もいち事業家としてオウタくんに負けないように、いつまでもピュアな心を大切に目の前のことに取り組んでいき、ともに切磋琢磨したいと思います!!これからもよろしく!

 

EVERY DENIM 島田舜介さん

47都道府県を旅中のえぶり号に乗ることを決めたおうたくんの決断力はすごい。学校に行く行かないじゃなく、自らの居場所を自分から作りにいける中学生なんてそういない。
何より毎月心身ともに成長していくおうたくんの姿が見れて嬉しかったです。
これからの人生、旅の想い出がおうたくんの為になりますように。共に自分らしい人生を歩みましょう!

 

LEBECCA boutique 赤澤えるさん

オウタくん。寡黙な男の子だと思っていたけれど、私も学校に行っていなかったんだよと言うと、彼も少しずつ心の内を話してくれるようになった。
共に旅をしていたキャンピングカーの天井部分の狭いスペース、そこに二人で寝転がり、星の見えない空中を見上げながら「学校に行かないということ」について語り合った。私たちは大丈夫、と互いに確認するような少ない言葉の交換。学校に行っていない人と学校に行っていなかった人が話す時間、それは誰からも見えないところできらきらしていたと思う。
私は、彼ならきっと本当に大丈夫だと思う。学校に行かない選択は脱落や失敗なんかじゃない。私たちは自分たちで確かめられるはず。君の未来を心から楽しみにしているよ。

 

内面ととことん向き合った後で外に出ることを選び、いろんな人に出会い、刺激を受けて変わっていく。その経験は、何歳だって人生の大きな糧になるはず。

この記事が、オウタくんの言葉が、ほんの少しでも誰かの背中を押すきっかけになれば嬉しいです。

 

そして、オウタくんが書いたジモコロの記事もお楽しみに!

 

構成:新國翔太(Twitter


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