こんにちは、ジモコロ編集長の柿次郎です。
僕は今までいろんなローカルの「面白いおじさん」に会ってきたんですが、彼らの共通点って「なんでだろう」だと思うんです。つまり「疑問と好奇心」。
子どもみたいに「なんで? どういうこと?」って言ってるおじさんほど、自分の人生をメチャクチャ楽しそうに生きている。ということは、人生を楽しむ秘訣は「なんでだろう」なのでは…?
大いなる世界の秘密に気づいてしまったので、今日は「なんでだろう」のプロに会いにきました。
そんなプロいる? いやいや、皆さん必ず一度は目にしたことがあるはずです…
この動きとジャージは……もしや……
そう…………
テツandトモさんです!!!
“昆布が海の中で出汁が出ないのなんでだろう〜”
“山登りする人はみんなチェックの服なのなんでだろう〜”
“教室のカーテンに巻きついて遊んでいるやつなんでだろう〜”
“救急車がくると「迎えにきたよ」っていうやつなんでだろう〜”
などなど、誰もがテレビで観た記憶があるのではないでしょうか?
「なんでだろう」で一世を風靡したお二人は、取材場所につくなり全力でネタを披露してくれました。サービス精神!!!
「歌も動きもキレがすごいですね」
「ここ4〜5年、年間約200本の舞台に出てますから」
「え、そんなに? 営業ですか?」
「はい。日本全国、地元のお祭りから企業さんの社内イベントまで色々です。行った先の土地でネタも探してますよ」
「めちゃめちゃ『なんでだろう』掘ってるじゃないですか…!」
「人生に『なんでだろう』は欠かせませんから!」
テレビで活躍していたお二人は、いまどのような思いで全国のステージに立っているのか? 本当に「なんでだろう」が人生に必要なの? テツandトモさんに話を聞きました!
営業で1時間の舞台を沸かせるプライドがある
「年間約200本の営業って、どんなスケジュールで動いてるんですか?」
「週の半分以上は東京以外にいますね。日帰りもありますし、2泊3日や4泊5日とか」
「同じ地域で固まらないこともあるので、北海道行った次の日に九州行って、さらに東北…みたいなこともあります」
「めっちゃ動いてる!」
地方企業のパーティーにサプライズゲストで登場(テツandトモ 公式ブログより)
「活動の中心をテレビから舞台に移されてますが、そうした全国を回る営業の面白さってどこにありますか?」
「…………」
「あれ???」
「テレビに出られなくなった芸人が、仕事がなくて地方を回ってる…みたいな考え、ちょっとだけ持ってませんか?」
「いやいやそんなそんな……」
「…………」
「い、いや、違うんですよ!」
「あはは、冗談ですよ!」
「(びっくりした……)」
「僕たち、テレビの仕事と営業の仕事は全く別だと思ってるんです。それこそ、ラーメン屋さんと寿司職人って、同じ料理人でも全然違う仕事じゃないですか?」
「ラーメン屋の人はなかなかお寿司を握れないでしょうね」
「ですよね。バラエティ番組のMCやひな壇で活躍されてる芸人さんたちって本当にすごいと思うんです。短い時間で面白いコメントを言って、笑いをとって、場を回して……。僕たちはああいう風にはできない。でも、営業のステージだったら、自信を持って1時間やれます」
「おおお。やっぱり全然違う難しさが?」
「特に企業さんのパーティーでは、僕たちを見に来たわけじゃないお客さんもいるし、年代も性別も色々。だからお客さんの様子を見ながら、臨機応変に対応しなきゃいけないですね」
夏祭りのステージで、地元の子どもたちと一緒に「なんでだろう」を歌うお二人
(テツandトモ 公式ブログより)
「あとはテレビの場合、お客さんは画面の向こうにいるじゃないですか。つまり、現場のスタジオで視聴者の反応はわからない。視聴率も『面白かったかどうか』の指標とはまた違いますよね」
「たしかに視聴率で『本当にお客さんがウケたかどうか』はわからないですね」
「お笑い芸人は、笑ってもらえるかどうかがすべて。イベントで目の前のお客さんが笑わないと一発でわかりますし、もし一度でもダダ滑りだったら、その評判が広がって次は呼ばれないかもしれない。そのプレッシャーのなかでお客さんに楽しんでいただく喜びは、営業でしか得られないんじゃないですかね」
「なるほど。舞台は生ものって聞いたことがありますけど、相当なプレッシャーでしょうね…」
「最近、やっと楽しくできるようになったかもしれません。それはやっぱり、行く先々でネタを探して、試行錯誤を積み上げて来たからで」
「以前、障がいで体を動かすのが難しい車椅子の患者さんたちの前で、ネタを披露したんですね。最初は何も反応がないように思ったんですけど、よく見たら足が動いてるんですよね」
「笑うことはできなくても、ちゃんと反応してくれていた…」
「そう、表情とかで表現できないだけで。そして、最後にタイプライターで書いた手紙をくれたんです。『すごく楽しかった。また来てください』と書いてあって、マネージャーと3人で泣いちゃいました。なんだろう、ちゃんと伝わったことの喜びというか」
「僕もお笑いが好きなんですけど、『笑い』の力ってすごくあると思うんです。それに地方にいたり、入院してると、芸人さんのネタを生で見られる機会ってなかなかないじゃないですか。そこにお二人が足を使って出向いてくれる価値ってめちゃくちゃあるはずで」
「それで喜んでいただけるのはなによりですね」
【テツandトモのなんでだろう その1】
営業で全国をまわってるのは、テレビの仕事がなくなったからと思われがちなのなんでだろう〜?
ブラウン管の距離感と、生の距離感の違い
「他にも営業の面白さはあって…」
「おお、なんでしょう?」
「テレビの場合、撮影した映像をディレクターさんが編集して作品にしますよね。でも、ライブやステージは誰も編集しないし、僕たちがやったことそのままが作品になる。お客さんが笑わなかったら僕たちの責任だし、そこで落ち込むのも自分たち。そういうリアルさが面白いですね」
「そのぶん、上手くいった際の手応えも大きそうです」
「二人とも演劇をやっていたので、舞台ならではの瞬間瞬間の面白さは好きなんでしょうね。ブラウン管越しの距離感ではなく、生のライブ感を」
「もうブラウン管じゃないけどね(笑)」
「歳が出ちゃうな…(笑)。目の前の人に喜んでもらう意味では、テレビも同じ部分はありますけどね。まず現場のディレクターさんやロケ先の人に笑ってもらう。それがいい番組に繋がり、次の仕事にも繋がると」
「僕たちの仕事は声をかけていただかないと始まらないので。そういう意味で、テレビはすごく大切だと思います。やっぱり大きなメディアで、いろんな人に見ていただけますから」
「年に1回の『笑点』だったり、子ども向け番組だったり、テレビから今もお声がけいただけるのが嬉しいですよ」