こんにちは。ジモコロライターの根岸です。
ぼくは今、山手線の鶯谷駅にいます。
鶯谷といえば、東東京の中心的繁華街でもある上野や、遊郭の名残を残す吉原などにもほど近い、ラブホテルと下町情緒が混在するディープなエリア。
地縁があるとすれば、自分自身がこのあたりの学校に通っていたことと、周辺の地名が「根岸」であることくらいでしょうか。 「根岸」が「根岸」にやってきたなんて、皆さんにとってはどうでもいい話ですよね。本当に申し訳ありません。
「(謝るくらいなら言わなければいいのに…)それはそうと今回、ぼくがお世話になっている人気焼肉店オーナーの森田隼人さんに取材をしたくてですね」
「あの予約1年半待ちの焼肉店を手掛ける?」
「そうです。森田さんの仕事観やマネジメント論に前々から興味があったのと、森田さんもちょうど人を探しているらしくて。だったら一緒にやっちゃおうという一石二鳥な企画です」
「もしかして求人に繋げて、森田さんに恩返ししようとしてる?」
「そりゃ、そうでしょう! 森田さんのお店にクライアントとか仲良くなりたい人を連れていったらすごいんだから! みんな幸せになるんだから!」
「す、すごい気迫だ…」
「肉と日本酒」を五感で楽しむ新感覚の焼肉店
森田さんは、2.2坪の激セマ立ち飲み焼肉店「六花界(ろっかかい)」や、予約1年半待ちちの会員制焼肉店「初花一家(はつはないっか)」などを手がける六花界グループのオーナー兼シェフ。建築士やプロボクサー、モデルなどいくつもの顔を持ち、豊富な人生経験を糧に、斬新なスタイルのお店を次々と立ち上げてきました。
肉と日本酒の組み合わせを追求するストイックなスタイルが注目を集め、近年は有名シェフが名を連ねる「CHEF-1」にも参戦するなど、「肉のスペシャリスト」としてメディアにも引っ張りだこの森田さん。今回求人する「CROSSOM MORITA」は、そんな森田さんがクラウドファンディングの支援を受けて、3年間の期間限定で立ち上げた新店です。
日本各地の蔵元と共同研究した「日本酒吟醸熟成肉」や、それを店内でさらに熟成させる「ミートキープ」、プロジェクションマッピングを駆使した料理の総合演出など、従来の焼肉業界にはなかった新たなスタイルで、なんと予約はすでに1年先まで埋まっているのだとか!
場所は、鶯谷駅徒歩1分くらいのラブホテル街のど真ん中。いったいどんな店なの〜? というわけで、柿次郎編集長と一緒にお邪魔してきました!
「巨大泡立て器みたいなオブジェがすごくない?」
「(まずそこ?)とりあえず、中入りましょうか」
「失礼しま〜す(小声)。ねえ、編集長、カウンターの輝きがすご……って、なにこれ?」
「こん棒? ここ焼肉屋じゃなくて、武器屋だった?」
「焼肉屋です」
「そこの肉、うまいっすよー。屈斜路湖のエゾシカなんですけど、もう群抜いてますわ。これひょっとしたら、うますぎてまずいんちゃうかな。そんくらいうまいわ」
「あ、森田さんだ。今日はよろしくお願いします(うますぎてまずいって新しくない……?)」
◆森田隼人(もりた・はやと)
1978年、大阪府生まれ。大学卒業後、建築関連会社に就職し25歳で設立。
店舗設計やリサイクル事業を行っていた経験を生かして、2009年7月に神田のガード下に激セマ立ち飲み焼き肉店「六花界」をオープン。メディアの取材が押し寄せる超人気店に。その後、「初花一家(はつはな)」「吟花(ぎんか)」「五色桜(ごしきざくら)」を立ち上げる。
2013年4月には著書『大繁盛の秘密教えます! 激セマ立ち飲み焼肉店「六花界」だけに人が集まる理由』(角川学芸出版)を刊行。近年は、日本酒の普及活動や、新聞へのコラム執筆、セミナー講師も行っている。プロボクサー、トレーナー、モデルとしても活躍。
「著書にはお店を立ち上げるまでの経緯や森田さんの『食』にかける熱い思いが大体全部書かれているので、興味を持ったらぜひ読もう!」
食の「経験」を与える焼肉店
「それにしてもでっかい冷蔵庫ですね」
「これはクラウドファンディングの支援で作らせていただいた熟成庫です。そのなかでお客様の肉を熟成させるんです。日本酒酵母を使ってじっくりと」
「おお、これが……」
「はい、日本酒吟醸熟成肉のミートキープです。うちの店ではお客様がお帰りの際に次回来店の予約を確認するのですが、ミートキープはそのとき一緒にご注文いただきます。1年間限定で、肉をボトルキープするようなものですね。この工法で仕上げた熟成肉はやわらかくて、調味料なしでもありえないほどの旨味があって……」
「(ごくり……)」
「設備もメニューも、これまで手がけてきたどの店よりも手間暇かけてつくってますよ。2階ではプロジェクションマッピングをできるようにしましてね、いろんな体験を通じて、五感で食を楽しんでもらいたいと考えているんです」
「五感ですか」
「そうです。たとえば、青々とした海が目の前に広がる砂浜で、心臓を赤貝に見立てて食べるとするじゃないですか」
「はい(なんだろうその状況)」
「『それではみなさまご覧ください、沖縄の美しい砂浜でございます!』といって、テーブルに砂浜の映像を投影する。お皿の上にはまるで赤貝のような、生き生きとした心臓。それを砂に見立てた調味料で……」
「ほほぉ……」
「お味はいかがでしたか? それでは次に召し上がっていただくのは牛肉入りのリゾットです。チーズは入っていませんが、チーズの香りがするリゾットをご用意させていただきました」
「……(あれいつの間にか、森田ワールドに?)」
「こちらをご覧ください!」
「???」
「これは溶岩をイメージして、職人に焼いてもらった特別なお皿でございます。中心のくぼみにはリゾットが入っています。そこでぼくが合図をすると、ここから火がぶわ〜〜〜〜〜っと立ち上がって……」
「!?!?!?!?」
「周りが一気に溶岩の映像に切り替わるっ! そして、ビートルズの音楽が流れてきて……」
「ここ焼肉屋ですよね?」
「焼肉屋です」
「ちょっとヒートアップしてしまいました」
「大丈夫です。思考が追いつかなくなっただけです」
「言葉だけで説明するのも限界があるので、映像をご覧ください」
「す、すごーー!!室内全体がいろんなシチュエーションに切り替わるんですね! まさに食のエンターテイメントだ…」
「驚いたでしょう? ぼくは今、時代は経験を求めていると思います。だからこの店ではお客さんにこれまでに体験したことのないような経験を与えたい。そして、『食』で人を喜ばせたい。『食』ならそれができるんです
「最近『利他的』っていう言葉にハマってるんですけど、森田さんはそれが自然にできる人ですよね。表現者は相手に何かを差し出す意識がないといいものは作れない気がするので」
「ありがとうございます。ぼくこの店に自信があるんですよ。自分の店だけど、『こんな店あったら来てみたいわ〜』って思いますもん。そうやった。立ち話もなんですから、場所を移しましょうか」
「新しい風」で熱量と密度を再構築する
「今回の取材は森田さんの仕事観をお聞きしつつ、どんな人材が欲しいのか教えてもらいたいんですが」
「うーん、人材ねえ。どんな人がいいんやろ……。今までうちで働いてくれた人たちはみんな六花界の常連さんだったから、公に求人するのは今回が初めてで」
「六花界グループで働くって、ちょっと特殊な感じしますよね。会員制というコミュニティのなかで、人との関係性もすごく濃そうだし」
「うちの店知ってくれてる人がほんまは一番話早いんやけど、それやったらうちの店でお客さんたちに声かけた方がすぐに人は見つかるだろうし、こうやって求人出す意味ないわけですよね。六花界グループって、いままで煮詰めてきたことの熱量と密度がすごいから、それを再構築していくためにも、新しい風は必要でして」
「職種は?」
「一応キッチン、ホール、バーテンを募集していますが、『肉と日本酒』という新しいジャンルで、いろいろ勉強したいと思ってる人も大歓迎です。年齢も問いませんし」
「3歳のうちの息子でも?」
「接客できます? それで考えたら、人生経験は大事ですね。これまでいろんな経験をしてきていて、さらに人生を遊びたい方がいいと思います。『食』は一生を費やすに値する遊びなので、それを楽しめる人かなぁ」
「あとは何かに特化してくれてたらいいですね。たとえばパティシエ経験者とか、料理の専門学校出てるけど、今まったく別の業界で仕事してる人とか。学んだ技術を生かせてないと感じるなら、うちでやってみたらいい。何か一歩行動したいと思ってる人やいつか海外に飛び出したい人、夢を持ってる人もいいですね。そんな人、うちに来たら人生大きく変わると思うわ〜」
「人生変えちゃう焼肉屋ってすごいなー」
「ぼくはその人のスイッチが見えれば、そのスイッチをなんぼでも押してあげるんですよ。お店を持ちたかったら、当然店も持たせてあげます。もちろん、そこから先は自分の力ですけどね」
「森田さんはたぶん、ナメック星人の最長老みたいに能力を引き出すタイプなんですよ」
「引き出されてみたいわ〜」
「優秀じゃなくていいんですよ。そもそも優秀ってなんやろって話じゃないですか? ぼくが思うに、『ごめんなさい』や『ありがとう』が言えるとか、幼稚園で教えてもらったことが普通にできる人は優秀ですよ。だから、うちではあたりまえのことがあたりまえにできて、普通に社会に出られる人なら、誰でも働けるんです」
「じゃあ、知識とか経験もそこまで?」
「料理は経験じゃないですもん。やる気とセンス。あと、命を扱うんで、命の大切さを理解すること。ざらっというと、ボーイスカウトやってたようなやつらは完璧ですね。そのままいけるんちゃう? 野草の見分け方とかも大体分かってますしね」
「手旗信号もできますもんね」
「それ必要ある?」
「うちにきてくれた人を首にしたことないんで、誰でもいいから一回会いたいです。あ〜ほんま、誰かに会いたいわ〜」
誰もが必ず通る「六花界」という道標
「新人さんはどういう仕事から?」
「まずぼくの側に1ヶ月くらいいてもらって、そのあとは六花界です。立ち飲みなんで、これをやることによって、お客さんがその人につくんですよ。六花界のお客さんってグループの全店舗にいるので、そこで仕事をすると、別店舗にもスムーズにスライドしていける」
「六花界は必ず通る道なんですね」
「はい。それを経験した後は各々の店でイベントを立ち上げたり、メニューつくったりとかもやってもらう。慣れてきたら今度は新たに六花界に入ってきた新人を教える役割も担ってもらうと」
「人材育成の循環システムが構築されてる」
「仕事も普通の飲食店に比べたら楽だと思います。六花界を除けばなにせ、ぜんぶ予約で埋まってますから。決まった時間に、決まった人数がやってくるので、それをおもてなしするだけ。お出しするメニューもお酒も決まっています。営業時間も短いので、スタッフは大体毎日準備を含めて8時間以内に仕事が終わってます」
「残業なしとか今どき珍しいくらいのホワイトさ」
「だからこそ、そのなかでどれだけ遊びを考えていけるかが大事。そこにいるスタッフたちもみんなそんな感じで仕事をしていますよ。元々システムエンジニアだったスタッフもいるんですが、日本酒に対する舌が良かったから採用しました」
「ひとつの能力が特化していたんですね。そこの個性を軸に教育していくと」
「ですね。ほんまは教えたら授業料払ってもらいたいくらいやけど、うちは学校みたいにひとつずつ教えるんですよ。いろんなことを経験して覚えてもらって、どんどん自分を磨いてもらいたいから」
森田式ブランディングの秘密
「森田さんって幅広いフィールドがありますが、ブランディングを徹底しているじゃないですか。スタッフの皆さんにもそうなってほしいと思いますか?」
「六花界で自分の魅せ方を学んでいく人は多いですよ。ぼくは、自分を魅せることは人間として生きてるかぎり、どんな世界にいても必要なことだと思うんで」
「(ドキッ……)」
「(この人、なんでドキドキしてんだ)」
「スタッフのみんなにはこれからどんな風にも転んでいけるように、自分の武器を増やしてほしいです。だって今の時代、ひとつのことしかできないんじゃだめやないですか? 最低3つくらいの武器がないと生き残れない。テレビ出てる芸能人見てても、大体そうやなって。3つやな、テトラやな〜って」
「3つ……?(まじか)」
「それと、やっぱりここだけは負けへんっていうものをつくるのが大事ですよね。それを同じ業界のなかで『こいつはすごい』と思う3人に提示して認めさせればいい」
「3人?」
「そう。そいつらはそれぞれすごいネットワークを持っているから、その3人にさえ認められれば、業界内外で知られた存在になれる。つまり、その他大勢を凌駕して、一気にてっぺんに近づけるわけやね」
「そうなんですか?」
「そうなんです」
「……(すごい説得力)」
「あとは、チャンスを逃さないこと。ぼくは絶対に逃さない。チャンスだと思ったらそこに向かって全力で進むから」
「そういう意味ではもしかして、この求人もチャンス?」
「チャンスもチャンス、完璧にチャンス。この店が注目されてすごい店になることは分かっていることなんで」
「予約も1年先まで埋まってますしね」
「そう、1年たったらこの店、だいぶおもろいことになってるから、今この段階から『わちゃわちゃやっていこうよ!』って呼びかけたい。今ちょうどバスが止まっているところなので、それが行っちゃうまえに乗ってほしいんですよ」
「おお、そこまで言い切れる自信は流石です。ものすごいチャンスな気がしてきました」
食を通じた「遊び」を創造していく六花界グループ。そして圧倒的なカリスマで人々を魅了していく森田さん。新店オープンのこのタイミングなら、いろんなことを学びながら、いちから店をつくっていくダイナミズムも肌で感じることができるのではないでしょうか。
焼肉界のカリスマ・森田さんと一緒に働きたい人は・・
六花界グループの求人情報一覧 | アルバイト・バイトの求人情報ならイーアイデム
チャンスしかないバスが止まってるぞー!
ライター:根岸達朗
1981年生まれのフリーライター。1児の父。息子が私のことを「うんちばかもの」と呼びます。
Mail:negishi.tatsuro@gmail.com/Twitter ID:@onceagain74/Facebook:根岸達朗