こんにちは、ライターの坂口ナオです。
私は今、高知県にある小さな港町「矢井賀(やいが)」に来ています。
高知県の中西部に位置し、太平洋に面するこの町は、かつては漁業で栄えた町でした。
しかし現在の町には、お店も信号もなく、唯一あった小学校も閉校。住民の数は全盛期の1000人から200人ほどまでに減少し、そのうち7割が65歳以上という、高齢化と過疎化の進む町となっています。
そんな矢井賀に、なぜ私は、東京から飛行機で2時間、車で2時間もかけてやってきたのかというと……
この町で行われている、「過疎化問題」と「猫の殺処分問題」を目指した、ユニークなプロジェクトの噂を聞きつけたから。
そのプロジェクトの拠点となっているのは、こちらの建物。なにやらにぎやかな声が聞こえてきます。さっそく中へ入ってみましょう。
坂口「こんにちは〜!」
おばあちゃん「こんにちは〜!」
坂口「みなさん、何をされているんですか??」
おばあちゃん「これはね、猫のおやつを作っているんですよ」
(写真提供:Yaika公式サイト)
そう、この場所で作っているのは、地元の魚を使った猫の身体に優しいおやつ「おさかなグリル」。
「港の猫とおばあちゃんプロジェクト」という、なんともほっこりしたネーミングのこの取り組みは、
(写真提供:Yaika公式サイト)
市場で売りものにならない魚を漁師さんから買い取る
↓
身体に優しくて美味しい猫のおやつを作る
↓
過疎の町のおばあちゃんに作業をお願いして雇用を生み出す
↓
さらに、売上金の一部を猫の保護活動に寄付する
……という、「猫」「人」「町」が喜ぶ、
なんです。
筆者の中学時代
実は私、これまで合計5匹の猫を飼い、殺処分問題にも心を痛め、高校生のときには猫の保護活動を行う団体に自ら入会したほどの無類の猫好きでした。
しかし、大人になるにつれて自分の生活を優先するようになり、いつしか殺処分問題に目を向ける機会も減っていきました。でも、そんな自分をどこか後ろめたく感じていたのです。
だから、このプロジェクトを知ったときには
「これなら私のような思いを抱えている人でも、猫の殺処分問題へ積極的に力を貸せる。このプロジェクトを、もっとたくさんの人に知ってほしい!」
と大興奮。鼻息も荒く取材依頼を取り付けた、というわけなんです。
夢のようなプロジェクト、どんな仕組みになっているの?
というわけで!
本日お話を伺うのは、プロジェクトの発起人である、井川 愛(いかわ あい)さん。
2018年4月に「Yaika Factory」として合同会社化し、事業としても本格的なスタートを切ったこのプロジェクトがどのようにして生まれたのか、その背景と想いを伺います。
坂口「今日はよろしくお願いします!」
井川さん「よろしくお願いします!」
坂口「さっそくですが、材料になる魚はどこから手に入れているんですか?」
井川さん「漁師さんから、売り物にならない魚を直接買い取っています」
(写真提供:日本微住計画)
坂口「売り物にならない魚?」
井川さん「そう言うと聞こえが悪いんですけど、市場では、傷モノだったり、小さいサイズだったり、磯の匂いが強い魚には値がつきにくいんです。あと、人間は食べないけど猫は好んで食べる種類の魚もありますね」
坂口「そうなんだ!!」
井川さん「磯の匂いが強いって言っても、十分に美味しいんですよ。この辺の人は美味しい魚を食べ慣れてるから、基準が厳しいんです」
坂口「でも、プロジェクト的には宝の山じゃないですか!」
井川さん「環境としてはすごくいいですね。ただ、お願いできる漁師さんがまだ2人しかいなくて、毎回そういう魚が捕れるとは限らないので、なかなか苦労してます」
市場で売っている魚は「基準を満たした」選ばれし魚
坂口「お願いしている漁師さんは、矢井賀の方なんですか?」
井川さん「矢井賀と、その周辺の漁師さんにお願いしています。
プロジェクトの目的のひとつに、『矢井賀の地域おこし』も含まれているので、材料に地域のお魚を使って町を活気づけ、地元の方に仕事をお願いすることで町に雇用を生み出すようにしているんです」
坂口「なるほど、それでブランド名も『Yaika(やいか)』なんですね! あれ? でも矢井賀の読み仮名って『やいが』じゃなかったですか?」
井川さん「正式には『やいが』なんですけど、この地域の人たちはみな『やいか』と発音するんです。その響きが可愛くて、みんなにも知ってもらいたいと思って、あえて『Yaika(やいか)』と名付けました」
(写真提供:Yaika公式サイト)
坂口「作業にあたっているおばあちゃんたちは、どうやって見つけたんですか?」
井川さん「役場の人から紹介してもらいました。作業をお願いしているおばあちゃんは全部で6人で、みなさんもともと『蜑(あま)の里やいか』という地域起こしグループのメンバーだったんです」
坂口「おお、すごい人たちだったんですね!」
井川さん「お魚が手に入ると、おばあちゃんたちに電話で『今日作業お願いできる!?』と招集をかけます。毎回、誰かしら都合のいい人が来てくれるような感じですね」
坂口「ゆるいですね(笑)」
井川さん「いずれ生産量が増えたら、きちんとシフトを組んでやらなきゃなぁと思ってます」
坂口「『おさかなグリル』はどうやって作ってるんでしょう」
井川さん「魚を捌いて、専用の機械で焼いて、10gずつに分けて真空パックに詰めるだけですね。ただ、このところ雨風が強くて魚が手に入らず、今日お見せできる作業は七面鳥を使った試作品作りになってしまうんですが……」
坂口「七面鳥と魚で作り方は違うんですか?」
井川さん「基本的には同じです。捌く作業がないくらいですね」
専用の機械で数分焼く
味付けはしていないが、人間が食べても普通に美味しい!
10gずつに分けて、真空パックに詰める
あとは冷凍したら、完成!
井川さん「このあと、冷凍して完成です」
坂口「冷凍の状態で販売しているんですか?」
井川さん「そうなんです。はじめは常温販売がしたかったんですけど、そのためには、数千万円もするレトルト機を購入する必要があったんです」
坂口「それで常温販売をあきらめて、冷凍で販売することにしたんですね」
井川さん「はい。でも、それが結果的にすごくいい選択になって」
坂口「どうしてですか?」
井川さん「プロジェクトの大きな目的である、『猫の保護活動』に貢献することができたからです」
坂口「常温ではなく冷凍販売にしたことが、猫の保護活動に繋がる……?」
主力商品の「お魚グリル」
井川さん「冷凍だと普通、送料が商品よりも高くなってしまうんですが、これを解決するために、『生協方式』を採用することにしたんです」
坂口「生協方式?」
井川さん「『注文が一定数たまったら、届ける日と場所を指定して、お客さんに商品を取りに来てもらう』という販売方式です。これならひとまとめに送ればいいので、送料が安く済む。そこで思いついたのが、保護猫カフェをハブにすることでした」
坂口「なるほど! そうすれば、商品を買いに来てくれるお客さんは、自然と保護猫カフェに足を運んでくれるというわけですね」
井川さん「そうなんです。販売先を保護猫カフェに限定することで、お客さんがカフェに行く理由が増えるし、商品のリピーターになって何度も足を運んでくれれば、そのうちにお気に入りの猫ちゃんを家族にしてくれるかもしれない」
坂口「それは最高……」
井川さん「今は、板橋区にある『CAT’S INN TOKYO』さんと、千葉県浦安市にある『猫の館ME』さんで販売させてもらっていて、余分に作った分をインターネットで販売するようにしています。仕組みが整ったら、ほかの猫カフェさんでも販売できるようにしたいと思っています」
アイデアの元は、好きなものの詰め合わせ
坂口「いや、すごいです。関係する誰もが幸せになれる、理想的なプロジェクトですよね」
井川さん「そう言ってもらえるとほんとに嬉しいです! ありがとうございます」
坂口「井川さんは、もともとこういう事業の立ち上げを仕事にされていたんですか?」
井川さん「いえ、もともとは東京で司会業や研修講師の仕事をしていました。ただ、このプロジェクトのアイデアができた2014年頃は、その仕事も身体を壊して辞めて、専業主婦をしていましたね」
坂口「じゃあこのプロジェクトは、仕事は関係なく、自分のやりたいことから始まったんですか?」
井川さん「そうなんです。仕事を辞めたとき、ちょうど40歳目前で、今後の人生どうしようかな……って考えて。そこで思ったのが『好きなことをして社会と関わり続けたい』ということでした。『じゃあ好きなことって何?』と考えてぼんやり浮かんだのが『海の近くに住みたい』『猫に関することがしたい』の2つだったんです」
インタビュー中でも構わず井川さんに甘えにくる愛猫のオルカ
坂口「昔から猫は好きだったんですか?」
井川さん「実は、もとは犬派でした。でも、ひょんなきっかけでこの子(オルカ)を飼い始めてから、夢中になっちゃって(笑) 。東京に住んでいたときは、フリーマーケットに出店しては、売上金を猫の保護活動に寄付していたこともありました」
坂口「おお! すごい行動力ですね!」
井川さん「あと、主婦になって散歩が日課になったんですけど、そこで、毎日のように散歩をしている元気なお年寄りがいることに気づいたんです。そのおじいちゃんおばあちゃんのエネルギーを、私がやりたいことにうまく活かしてもらえないか、と思って……」
坂口「『猫に関すること』と『海の近くに住むこと』に?」
井川さん「そうです。私、この『みさおとふくまる』って写真集が好きで。それもあって、おばあちゃんと猫、っていう構図で何かできないかな、と思ったんです」
「おばあちゃんと猫」のインスピレーションを得た写真集『みさおとふくまる』
坂口「たしかにこの組み合わせ、最強にほっこりしますよね!」
井川さん「で、ある日、それらのぼんやり考えていたことを、これまでにもいろんなことを相談させてもらっていた、ソーシャルビジネスに詳しい方に相談してみたんです」
坂口「なんと心強い相談相手……!」
井川さん「そこで、『猫を助けたい』『海の近くに住みたい』『お年寄りの元気を活用したい』と、そのとき考えていたことを全部ぶつけたんです。そこから話していって生まれたのが『おばあちゃんを雇用して猫のおやつを作り、猫の保護活動に貢献する』というアイデアでした」
坂口「意外と早い段階で構想はできていたんですね!」
身体に優しくて、美味しいごはんを食べさせてあげたい
坂口「それから間もなくして、プロジェクトが大きく実現に向けて動きだす出来事があったとか……?」
井川さん「愛猫のオルカが、糖尿病を発症したんです。それから、これまできちんとフードを選んでこなかった自責の念もあり、安心できるフードだけを選ぶようになりました。でも、その行動が、オルカを瀕死の危機にさらす結果になってしまったんです」
坂口「えっ、フードを厳選することは、逆にオルカの命を守ることになるのでは?」
井川さん「糖尿病の治療ではインスリン注射を行いますが、そのあとに適切な食事をとらないと低血糖を起こしてしまうんです。でもオルカは、私が選んだ『健康にいい』フードをなかなか食べてくれませんでした」
坂口「なんででしょう? 美味しくないから?」
井川さん「病気になる前は、カロリーが高いフードばかり食べていたので、味覚もそちらに慣れてしまっていたんだと思います」
坂口「なるほど、ジャンクフードばかり食べて育った子供に、突然ヘルシーな食事を与えるようなものか……」
井川さん「そしてついに、オルカが低血糖を起こしてしまったんです」
坂口「大丈夫だったんですか!?」
井川さん「すぐに気づくことができたので、後遺症も残らず無事に回復しました」
坂口「良かった……」
井川さん「でも結局、オルカのためにと思ってしたことが、オルカの命を危険にする原因になってしまったわけです。そこから『健康にいいだけじゃだめだ。オルカが喜んでくれるごはんを食べさせてあげたい』と思うようになったんです」
坂口「その想いが、『猫のおやつ』作りプロジェクトの原動力になったと。今では、オルカの食事は全部Yaikaで作ったものにしているんですか?」
井川さん「いえ、基本は普通のフードです。低血糖の一件で、自分が神経質になりすぎていたことに気づいたので……。Yaikaはあくまでおやつとして与えています。『そのほうが猫にとっても、たまの喜びになっていいんじゃないか』と、病院の先生からも助言をいただいて」
坂口「そうなんですね。Yaikaのおやつは、やっぱり食いつきが違いますか?」
井川さん「猫カフェだと喧嘩が始まるくらい人気みたいです。オルカは気分屋なので、まちまちですね。でも、気に入ると『もっとくれ』って、お手とかハイタッチをしてくれるんですよ」
お手をしてごはんを欲しがるオルカ
この海を見てすべてが繋がった「私、ここに住みます」
坂口「プロジェクト実現に向かって、最初に始めた具体的な行動って何ですか?」
井川さん「まず、都道府県が参加する移住フェアに行って、海の近くの移住先を探しました」
坂口「そのときは、高知県のほかにも気になる県があったんですか?」
井川さん「ん〜。いくつか候補はありましたけど、圧倒的に高知県に心惹かれてましたね。ほかの県のブースはかしこまった対応なのに、高知県だけは『いくら説明しても、実際に来てみないと分からんき〜』と呑気な対応だったんです(笑)」
坂口「あ〜、なんか想像つきます(笑)。 高知の人っておおらかですよね」
井川さん「そうなんですよ! 私、適当な性格なので、その県民性が自分に合ってる! と思って(笑)。 それから、都内で開催されている高知県主催の移住相談イベントに足を運ぶようになりました」
坂口「矢井賀とは、どんな風に出会ったんですか?」
井川さん「東京で仲良くなった移住相談員さんが、矢井賀のある中土佐町に住んでいて。彼女に会いに行ったら、近隣の町を案内して回ってくれたんです。そのなかのひとつに矢井賀がありました」
坂口「初めてここに来たとき、どんな印象を受けましたか?」
井川さん「それが……一目惚れしちゃったんですよ」
坂口「へ?」
井川さん「この矢井賀の海を見た瞬間、なぜか『ここだーーーー!!!』って思ったんです。ここならオルカに美味しいお魚を食べさせてあげられるし、海の近くに住めるし、元気な高齢者はたくさんいるし、全部実現できる! って。その場で『ここに住みたいので家を探してください』と言いました(笑)」
坂口「早っ(笑)」
井川さんが一目惚れした海
井川さん「そこから本格的にプロジェクトが始動しました。移住までの間は、ビジネススクールに通って、ぼんやりしていたアイデアをビジネスとしてきちんと回せるよう、プランを整えていきました」
坂口「移住したのは、初めて矢井賀を訪れてからどれくらい経ったころだったんですか?」
井川さん「2016年10月なので、9ヶ月後くらいですね。その間、矢井賀には何度も足を運んで、可能性の模索をしていました」
坂口「可能性の模索?」
井川さん「まずは役場に、思い描いていることを相談しに行きました。そしたら『面白い! ぜひうちの町で実現してください!』と言ってくれて。お金がないと言ったら、地域おこし協力隊の制度を紹介してくれたり、ほかにもプロジェクトに必要な人や制度などをいろいろと紹介いただいたりしました」
坂口「へえ! すごく協力的ですね!」
井川さん「高知の人は世話好きだっていうけど、その真髄を見ましたね」
坂口「高知県のプロモーションコピー『高知県は、ひとつの大家族やき。高知家』でも、高知のあったかさを押してますもんね」
井川さん「オルカを連れて来たときには、中土佐町のお魚をペロリと食べてくれて、ますます『この町でやっていきたい』という思いが強くなりました」
矢井賀で猫を増やそうとしてるのはお前か!!
高知県主催のビジネスコンテストで優勝した井川さんのスピーチ(写真提供:井川さん)
坂口「移住後すぐの、高知県ビジネスコンテストでは優勝されたとか?」
井川さん「そうなんですよ、ありがたいことに! で、その翌日が、矢井賀での地域おこし協力隊の着任だったので『きっと町の人たちも褒めてくれるだろうな、るんるん♪』みたいな気持ちで挨拶回りに行ったんですね。そしたら……」
坂口「そしたら?」
井川さん「1軒目で挨拶するやいなや『出て行け!!!』と怒鳴られたんです」
坂口「えー! なんで!?」
井川さん「『お前か! 猫を増やすとか言ってる奴は!』と。話が間違って伝わってしまっていたんですね。『増やすって言ってないけどな……』とぶつぶつ言ってたら、追い討ちのように『俺はなぁ、飼ってた金魚を猫に食われたんだーーー!』って」
なぜ野良猫が家の中にいる金魚を? と不思議に思い、「鍵は閉めてたんですか?」と聞いたところ「田舎は鍵は閉めん!!」と言葉を返されたそう
坂口「ちょ、理由が可愛すぎるんですけど」
井川さん「『増やすんじゃなくて、おやつを作って東京で売るんです。売り上げの一部は猫の保護活動に寄付して、そのお金で去勢手術とかをするので、増えるというよりむしろ減ると思うんですよね』と言ったら『……じゃあいいよ』と納得してもらえました」
坂口「素直!」
井川さん「でも、そのあとも『あんたが矢井賀を猫島にしようとしている女か』と言われることが続きました。漁師町である矢井賀では、猫は『悪者』。猫におやつをあげるなんてとんでもない! という人が続出したんです」
矢井賀の野良猫、クロスケちゃん
坂口「ええ〜! 違うのに〜!!」
井川さん「そうなんです。説明したらみんな分かってくれるんですが、『こりゃマズいぞ』と思いました。どうやら仕組みが伝わりづらいらしい、と気づいたんです」
坂口「田舎のお年寄りには、たしかに理解するのは難しいのかも……」
井川さん「そこで役場にお願いして、町の回覧板にメッセージを書かせてもらいました。A4用紙2枚分にびっしり『決して猫を増やしたいわけじゃないんです』と、思いの丈をこめて、このプロジェクトの概要と、そこにかける思いを綴りました。
坂口「それから町の人たちの反応は変わりましたか?」
井川さん「おおむね好意的なものに変わりました。その後はみんな興味津々で『猫のおやつなんて売れるのか』『なんで犬じゃないんだ』とか聞いてきてくれるようになりましたね。なかには『自分にできることがあったら手伝うよ』という人もいました」
坂口「おおお、井川さんの想いが伝わったんですね」
目指すのは「猫とおばあちゃんが幸せに生きていける社会」
坂口「そして2018年4月、ついに事業化&『お魚グリル』の販売開始、おめでとうございます」
井川さん「ありがとうございます!」
坂口「プロジェクト開始から今までを振り返って、一番大変だったことって何でしたか?」
井川さん「う〜ん、それが分からないんですよね。強いて言えば、作業場のプレハブを解体しているときが一番大変だったかな……。暑いし、虫はいっぱい出るし」
冒頭でも紹介した作業場のプレハブ。ボロボロだったものを解体し、DIYで作り上げた
坂口「もうやめようと思ったときはないんですか?」
井川さん「ないですね。ただ、ずっと前に進んでいないような感覚があります。それは今も続いていますね」
坂口「前に進んでいないような感覚?」
井川さん「何しろ全部初めてのことだから、確信がないんです。『これだ!』『いける!』と思えたことは、まだないですね。でも矢井賀のおばあちゃんや漁師さん、猫カフェのオーナーさんや中土佐町の職員さん……とにかくたくさんの方が協力してくれて、『こんなにいい猫のおやつ、ほかにないよ!』と応援してくれるから、なんとか続けられています」
坂口「今後、事業がもっとうまく回り出したら、拡大する予定はあるんですか?」
井川さん「そうですね。今は仕組みを整えるのが先ですが、できればこれから協力してくれる漁師さんや保護猫カフェを増やして、おばあちゃんたちの雇用もきちんと回せるようにしていきたいと思っています。ただ……」
坂口「ただ?」
井川さん「私がやりたいことの本質は、『猫を助けることがしたい』『いくつになっても好きなことで社会と関わり続けたい』なので、そのための手段は変わってもいいと思っています」
坂口「じゃあ、数年後には、もしかしたら違うことをしている可能性もある?」
井川さん「その可能性もありますね(笑)。あくまでも、目指すのは『猫とおばあちゃんが幸せに生きていける社会』。そのために今できることを全力で頑張りたいと思っています」
取材を終えて
「このプロジェクトをもっと多くの人に知ってもらいたい!」
そう思ってお話を伺ったあと、私はますますその想いを強めていました。
井川さんが思い描く未来、猫とおばあちゃんが幸せに生きていける未来に加担したい。そして嬉しかったのは、それを手伝う手段がちゃんとあるということ。
猫を飼っている人なら、自分の猫へのご褒美に。飼っていない人でも、誰かの愛猫への贈り物に。身体に優しくて美味しいYaikaの「おさかなグリル」は、きっと猫ちゃんにもその飼い主さんにも喜んでもらえるはずです。
都内の猫好きさんなら、購入の際、販売先の保護猫カフェ「CAT’S INN TOKYO」「猫の館ME」に足を運べば猫ちゃんたちに癒されるというおまけもあり。
ぜひこのソーシャルグッドな渦に巻き込まれに、Yaikaの「おさかなグリル」を手に入れてみてはいかがでしょうか?
☆Yaika 公式サイト https://yaikacat.com/
写真/二條七海(Twitter)