こんにちは、ジモコロ編集長の柿次郎です。
いきなりですが、個人事業主やフリーランスの皆さん、しばらく健康診断をしてないんじゃないでしょうか?
35歳以上なら人間ドックも考えなくてはいけませんし、ドキッとした人は多いはず……と、言いつつ、完全に自分のことでもあります。
「健康」と書かれたTシャツを着るほど健康への憧れを抱く僕ですが、忙しい毎日の中で時間を捻出するのが面倒くさく、ズルズル人間ドックへ行かずじまい……。
そんな時、たった3時間で完了する人間ドックと出合ったんです。
それが長野県茅野市にある「ライフクリニック蓼科」。
「たった3時間で終わる人間ドックへ行きます!」とFacebookに投稿したところ、同じ個人事業主やフリーランスの友人たちから勢いよすぎる食いつきが。
……社会の荒波で奮闘するフリーランスたちの悲痛な叫びが聞こえてくるぞ~!!
目の前のタスクに真面目に向き合う姿勢は素晴らしいこと。
ですが、長く好きな仕事を続けるためにも、一番の資本である健康を損うことがあってはならないはずです。
ということで、そんな不健康な大人たちに、実際に僕が受けた人間ドックの模様をレポートします!
3時間で終わる人間ドックとは?
身長は?という質問に対して「170cmくらい(過去の測定では169.8cm)」と答えてきましたが、ようやく証拠写真撮れたーー!
タワレコで視聴してる学生のようですが、聴覚検査です。なんかピーピー鳴ります。
血圧検査は毎回、予想以上に腕しぼられてこんな顔になりませんか?
館内は白と木を基調とした明るく、清潔感のあるデザイン。圧迫感がなくて、精神衛生上めちゃめちゃ良い気がします。
こちら南アルプスの山の景色が楽しめる待合スペース。たまたま和製アラン・ドロンみたいな男性と居合わせました。
こちらはエコー検査。身体にローションみたいなのを塗られて、洗濯バサミみたいなものが全身につけられます。
人生初のCTスキャン。一軒家建てられそうな最新の医療機器に身体が吸い込まれていきます。スタートレック!
世界初公開。私の中身です。画像の鮮明度がやばい。
一番抵抗感のある胃カメラ(内視鏡検査)直前。一切プレミアム感のない思春期を過ごしてきた私ですが、プレミアムな雑誌を読みつつ温かい飲み物を口に運びます。
その直後に鼻麻酔!! 首がカメみたいに!!
鼻の感覚が失われたら、先生による鼻からの内視鏡検査がスタート…。幸い鼻ストレートなため、まだ楽な鼻から内視鏡ですけど、鼻腔が曲がってるとできない可能性あり。一回調べといた方がいいかもしれません。
鼻から喉、そして胃の方へ内視鏡の管がグイグイ入ってきます。このとき先生は、右足でリズムを取りながら「ふんふんふん♪」と楽しそうに手を動かしていました。とはいえ、無抵抗のこの状態。ザンギエフでも抗えないと思います。
ボカシを入れていますが、意外にキレイな胃だったことをご報告しておきます!
以上、約3時間で人間ドックの全検査が終了。「あ、もう終わりなの!?」と感じるくらいあっという間でした。検査結果は後日、郵送 or 再びライフクリニックを訪れて先生のフィードバックをもらうことができます。
しかも、基本パック「LIFEドック」は4万円(税込み)ポッキリ。
「人間ドックって1日がかりで10万円くらいかかるのでは?」となぜか思い込んでいたので、短時間かつ、この費用感で丁寧に対応してくれるのは良かったです。
なぜ長野に病院を開いたのか?
さて、人間ドックを終えたところで、ライフクリニックの麻植ホルム正之(おえほるむまさゆき) 院長に話を伺います。
スウェーデン生まれで6歳から大阪で育ったという正之院長。いったいなぜ長野の地に病院を作ったのでしょうか?
「思った以上に人間ドックがあっという間で驚きました。しかし先生、なぜ長野に病院を作ったんですか?」
「まず、通勤のために満員電車へ15分以上乗るのが嫌だったんです」
「わかります!!!」
「まあ、他にも理由はありますが。ただ、人って動物なので縄張りがあるんです。満員電車ではそのパーソナルエリアを犯される上に、新聞を広げたり、携帯を眺めたり『わたしに触れないで』って無意識にアピールをする。それを二重のストレスだと思っていたので」
「僕も長野に家を借りて、車移動が多くなっただけで体調が随分よくなりました」
「お医者さんって、人が健やかに生きていく方法を考えていく仕事ですからね。そのためには自分の心身も生き生きと健やかな状態に保っておかないと」
「ライフクリニックの窓から見える景色もいいですよね。長野の山を眺めてると、病院ってことを忘れて非日常感に癒されてる自分がいました」
「病院って何か不安な気持ちで来る人が多いと思うんです。景観で少しでもホッとしてもらえたなら良かったです」
「先生はずっと長野にいらっしゃるんですか?」
「いえ。ライフクリニックを作る前は9年間、新潟の病院で修行しました。長野は母親が働いていたので、毎月のように通っていたんです。自分の病院を作ろうと考えたとき、都会よりも長野の方が僕にとってもクライアント(患者)にとっても優しい選択だな、と気づいたんですよ」
「『優しい選択』とは?」
「ライフクリニックは、比較的大きな規模の病院です。この規模の病院を建てるのに、東京なら費用も大きくなります。それに、同じ治療をするなら、自然豊かなところのほうが患者さんの体にもいいですよね」
「都会の人でも、自然に触れるついでに人間ドックを受けに来たくなるような環境ですよね。なるほどなあ」
カフェのように気軽に通ってもらい早期発見を目指す
「僕が驚いたのが、先生が待合室に迎えに来てくれることと、患者を『クライアント』って呼んでいることなんです。かなり珍しいですよね」
「僕たち医師が診るべきなのは『病気』ではなく『人』だと考えています。挨拶もろくにせずに、カルテだけ見ながら話して『はい次の人』というのは違うと思うんです。クライアントさんの方をちゃんと向いて話すとか、触れて確認してないと、いつしか病気だけを見ている人になってしまいます」
「よく医療ドラマとかに流れ作業で患者を診る偉そうな院長いますよね。大名行列みたいな回診をしたり」
「あれは大げさですけどね(笑)。ただ自戒も込めて、うちでは患者さんと直接話すときはお名前で、スタッフ間では『クライアント』と呼びます。言葉を変えることが行動を変える第一歩だと思っているので、そこは大切にしているポイントですね」
「患者としてではなく1対1の人としての交流が深まっている感覚があったので、なんかうれしかったです」
「安心感を感じていただけるのが一番うれしいですね。病院名の『ライフクリニック』にも、病気だけでなく、その人の人生ごと見ていきたい、人の人生に寄り添う場所になりたいって想いを込めていますから」
「あと、病院の内装がめちゃくちゃお洒落ですよね! 椅子がかっこよすぎてググったんですが、『ハンス・J・ウェグナー』とか『ベルグファニチャー』とか老舗ブランドの高級家具ばかりじゃないですか」
「古くから残るデザインって、人々にとって心地が良いものだと思うんです。まわりの自然豊かな環境と同じく、家具にも、ここへ来てくださった人たちを『大切にしています』ってメッセージを込めています」
「下世話な話、相当お金かけてますよね…?」
「まあ……○億くらいですかね」
「すごい! 設備投資にも気合が現れてる」
「ここまでお洒落だと、なんだか病院というよりカフェみたいな感じでした」
「実際に、カフェ使いをしてくれたらいいって思って作ったんです。病院には『病気にならないと行けない』って固定概念がありませんか?」
「え、違うんですか?」
「もちろん。僕は病気になる前に来てもらいたいと考えてます。上司に怒られたあとのちょっとした息抜きとか、今日は天気がいいからぼーっと山でも眺めながらライフクリニックでコーヒー飲むか、みたいな。いい意味で病院としての境目をなくしたくて」
「境目をなくす」
「はい。敷居を下げて通いやすい場所にしたいという概念的な意味はもちろん、建物としてもです。目の前に八ヶ岳がありますが、この建物も、実は山の一部なんです」
「どういうことですか…?」
「建物の外観は、山に囲まれた環境に馴染むようなデザインにしています。クリニックのサインも、山や川、水、青い空など、建物の回りにあるものからイメージしていて。環境と体との調和も大切ですけど、地域との調和も大事。日常にいきなり変な建物がぽこっと建ったら嫌ですよね」
「京都の街にあるコンビニがモノトーンの看板みたいなことですね」
「ええ。地域にとって不自然なものは、やっぱり長くは続かないですから。来る人は地元のおじいちゃん、おばあちゃんが多いんですが、僕はここを『健康の公民館』と考えています。情報交換したり、お茶を飲んだ流れで『そういえば最近ちょっと調子が悪いなあ』くらいの感じで診察を受けてもらったりしてほしくて」
「病院がそれくらい生活の身近にあれば、病気の早期発見にも繋がりそうですね」
「例えばガンの早期発見において、単発ではなく、定期的な検診がすごく重要なんです。だから、ライフクリニックでは日常的に通ってもらうなかで変化を捉えて『超早期発見』を目指してます」
「だから病院にカフェまで併設してるんですね」
「できるだけ場の敷居を限りなく低くすることで、身体にはもちろん、精神面でもバリアフリーを実現したいんです」
「確かに普通の病院って、外からは何も見えないし、理由がないと行けない。でも、ここは例えば僕みたいに都内のフリーランスの人間が『なんかかっこいいから来た』みたいに、フラっと訪れてもいいわけですよね」
「もちろん! 理由はなんでもいいんです。都内から長野への日帰り旅行のついでに、3時間だけ寄って人間ドックを受けてもらうイメージですかね。診察をきっかけに、リフレッシュできる休日を過ごしてもらえたら。理由があった方が、休みも取りやすいでしょ」
大人の免疫の7割は腸にあり?
「あと僕、さっき診療中に聞いた『腸内フローラ移植』っていうのがすごい気になってて」
※腸内フローラ…人間の腸内には、数百種・600兆個以上の細菌が小腸~大腸にかけて種類ごとにグループを形成してまとまり、腸壁面に生息している。その様子が植物が群生している花畑(英:flora)のように見えることから「腸内フローラ」と呼ばれ、腸内フローラの状態を「腸内環境」と呼ぶ
「ああ『糞便微生物移植』ですね。薬の投与ではなく、腸の細菌を移植することで病気を改善する治療法です」
「つまり……『うんこ』を移植する?」
「あ、といってもそのままじゃないですよ。うんこから抽出した液体を移植するんです」
「安心しました。新しい治療法なんですか?」
「はい。海外発で臨床実験中の治療ですが、腸の菌を入れ替えて腸内環境を整えます。するとアトピーや自己免疫疾患、いわゆる難病と言われているものや、鬱の人にも効果が期待されています」
「すごいですね」
「大人の免疫機能の7割以上は腸が担っているので、健康でいるには腸内環境を保つことが必要不可欠なんです」
「胃腸が弱い僕としてはめちゃくちゃ興味があります。腸内フローラって、どういう時に状態が悪くなっちゃうんですか?」
「原因は色々ですが、人生におけるなんらかのイベントが影響しているとされています。仕事が忙しすぎたあとに燃え尽きたり、幼稚園から小学校にあがるタイミングで不登校になったりした時に、一気に腸内環境が変わった例があります」
「原因はストレスなんでしょうか?」
「一概には言えませんが、おそらくは。腸内環境を整えるには水と食物繊維と乳酸菌が必要ですが、大きく変わってしまうとその3つのマネジメントだけでは困難になります。じゃあもう腸内フローラごと移植しよう、という治療法なんです。今は実験段階で、日本ではうんこの提供元として7人のドナーがいます」
「選ばれた7人! でも、田舎で毎日七分づきのお米を食べてるおじいちゃんとかも、めちゃくちゃいいうんこをしてそうですけど」
「まさにそうですね! 腸内フローラが元気な状態で年を取った人は、活力や元気があるから体を動かす仕事を長くできるんでしょうね」
「そういう腸の丈夫さってなにで決まるんでしょう?」
「人体において遺伝子が規定するのは3割で、7割は環境要因なんですよ」
「7割が環境か〜〜、まさに日々の生活と食べるものが健康を作っているんですね」
「もし生まれた瞬間にすべて遺伝的に規定されているなら、その人の人生は何なんだ?って話じゃないですか。生活習慣や食生活で、改善の余地は大いにあります」
「おおお、胃腸弱い人間の僕にもまだ挽回の可能性がありそうで、やる気が出てきました!!!」
大切なのは、自分の体をよく知ること
「大切なのは自分の体をよく知ることなんです。もし体内で不足しがちな栄養素があれば、その分をサプリメント(サプリ)で補いましょう、という考え方『サプリメーション』もあります」
「東京だと、食べ物で栄養をすべて補うことも難しいですよね。生命力の高い新鮮な野菜も高価になってますから」
「なので、サプリを武器として持っておくのはオススメですよ。僕は診療においても、選択肢を増やすことが大切だと考えています」
「選択肢、ですか」
「例えば貧血の場合、一般の病院では鉄分の薬を処方します。しかし、化学的に合成された薬が合わずに気持ち悪くなってしまう人もいます。そういう人は、『ヘム鉄』のサプリを飲めばいい。しかし、一般的な日本の病院において、鉄分の薬とヘム鉄のサプリを両方処方することはできないんです」
「え、どうしてですか?」
「サプリを処方するのは『自由診療』になるからです。一方で、日本の病院の多くは保険診療です。認可内の薬と認可外のサプリを両方出すと、混合治療になってしまうんですね」
※自由診療……国内で保険認可外の治療法や薬剤を選択できる代わりに、治療費の全額を患者が負担する(保険が適用されない)診療のこと
「うちは『自費診療』をベースとしていますが、それは治療時にクライアントにとってのより良い選択肢をひとつでも多く提供したかったからなんです。体調の改善が目的なら、サプリでいい場合もありますし」
「はー、病院イコール薬をもらうところだと思ってましたが、それ以外の選択肢もあるんですね」
「自費診療の場合、検査に関してもできることの幅が大きく広がります。人間の性格はすべて体内の物質量が規定しているので、例えば鬱っぽい人であれば、セロトニンとドーパミンのどちらが足りないか、みたいに細かく原因が調べられるんです」
「単純なユーザー目線でいうと、選択肢が多い方がありがたいです」
「僕は、病院がちゃんと知りたいことを知れる場所にしたいんです。もしガンになって訪れた人がいれば、放射線か手術、化学療法だけじゃなく、温熱療法や水素吸収、免疫治療という選択肢があってもいい。もちろん保険適用内で行えるものは、極力それで治療します。ただ、選択肢を隠すことはしたくないんです」
「保険治療にもメリットはあるわけですよね? 」
「もちろん。日本には国民保険があるおかげで、たった数万円で一流の先生にかかれます。アメリカでは健康保険制度がないから医療費が高額という話もありますよね」
「そんな風に、先生が患者の選択肢にこだわる理由ってあるんでしょうか?」
「僕はガンで親を亡くしてるんです。当時、親は63歳だったんですが、親孝行も全然できないままで。その時、病院から『自費診療』という選択肢は知らされなかったんですよね。過去へは戻れませんから、自分の悔しい体験をクライアントに還元したいという一心なんです」
「選ぶかどうかはさておき、知っているかどうかは大きいですね。日本はルールが多すぎて、『郷に入れば郷に従え』な風潮が強いなとたまに思います」
「僕は6歳のとき、親の仕事の関係でスウェーデンから日本に来ました。そこで日本語が全然話せなかったせいで、すごくいじめられました。ライフクリニックの開業前に日本の病院へ勤めたときも、そこ特有のルールや縛りに違和感を感じることが多くて」
「そういう環境だと、多様な選択肢ってなかなか許されないですね」
「だから医療や治療にかかわらず、大切なのは『自由と多様性』だと思います。集団のための個ではなく、個のために集団があるはずなので。もちろん学ぶために郷に従うことも必要ですよ。僕も長年、日本の病院で郷に従った上で、そろそろ個を出していいかなと、ここを開業しましたから」
「ライフクリニックの真摯な姿勢の理由がわかった気がします。今日はありがとうございました!」
おわりに
豊かな自然空間の中に佇む、カフェみたいに居心地の良い病院「ライフクリニック」。
地域のコミュ二ティであり、クライアント(患者さん)へ提供される選択肢の多さが生む、大きな安心感に包まれた場所でした。ここなら定期的に人間ドックを受けるモチベーションが湧きます。
最後にもう一度、ライフクリニックによる人間ドックのおすすめポイントをご紹介します!
気になる!という方は、以下から人間ドックの詳細をチェックしてみてください!
http://www.lifeclinic-t.jp/service/general-checkup.php
ちなみに「ライフクリニック蓼科」から車で約30分にあるコワーキングスペース「富士見 森のオフィス」。大自然の中にある立派な木造建築でインターネット環境が最強なんですけど…
フリーランスの新たな働き方だけではなく、働き方×健康の価値と可能性を見出したコラボプロジェクト「Work & Wellnessサービス」を実施中。森のオフィスの年間会員であれば人間ドックの割引があったり、麻植ホルム正之先生が定期回診で訪れたりなど、全国的にも珍しい取り組みとなっています。
仕掛け人は人間ドックの待合室にいた和製アラン・ドロンこと津田賀央さん(写真左)と、松井彩香さん(写真右)。
自然豊かな長野の環境、そして知恵と創意工夫で人を呼び込みたいプレイヤーの動き。東京から通える距離だからこそ、フリーランスを含めた「新たな働き方」の視点に健康面の価値を見出してみてはいかがでしょうか。
ちなみに私は東京の満員電車に乗らなくなって、温泉通い(週3回)を始めたら風邪をひかなくなりました。健康第一! 健康な身体あってこその人生です。この記事がより多くのフリーランスの人に届くことを願っています。
それではまた!
写真:小林直博