本棚からこんにちは、ライターのナカノです。
みなさん本は好きですか?私は大好きです。
ビジネス書も小説もマンガも雑誌もだーいすき!!
私は今、本好きにはたまらない場所に来ています。
本の海だ〜!!
本の山だ〜!!
大量の本棚で向こう側が見えないぞ〜〜〜!!!!
どこを見ても本、本、本
こちらは、長野県上田市にある「株式会社バリューブックス」の倉庫です。
「バ、バリューブックス…?どこかで聞いたことがあるような…」
という方もいらっしゃるのではないでしょうか。
あ、Amazonだ〜〜〜〜!!!!!
そう。バリューブックスは個人や法人が商品を出品・販売できる「Amazonマーケットプレイス」の出品者のひとつ。
しかし、バリューブックスは、すげーいい買取してんなぁ。
— vlood (@v00ld) 2017年6月1日
「PC遠隔操作事件 」もう出品してるやん。
でたばっかりの新刊なんだけどなぁ。
どういう層が、バリューに、買取してもらってんだろ。
分析してみたいとなぁ。
相変わらずバリューブックスさん対応早くてすばらしい・・・・・・楽しみじゃ~
— 瀬乃かざは (@seto1112) 2017年5月28日
尼のマケプレの買い取り王子とバリューブックスの信頼感の高さよ。あとネットオフ
— 反逆のチルーシュ (@palm_tree_gogo) 2017年5月22日
twitterでの評判は上々、Amazonでの評価も97%と高評価です。
私もAmazonで古本を買う際にはバリューブックスをよく利用するのですが、注文から到着までが早く、梱包も本の状態がとてもきれい。
2017年3月末にはバリューブックス「古本販売時に出版社に対して利益還元 」する取り組みを始めたというニュースを目にしました。
単なる中古本の売買だけではとどまらないバリューブックスの動き。
気になります。
まずは巨大倉庫を案内してもらおう!
今回、お話をお聞きしたのは株式会社バリューブックス代表の中村大樹さんです!
中村さんは現在34歳。東京電機大学を卒業後、約2年間せどりで生計を立て、24歳の時に株式会社バリューブックスを設立しました。
24歳で起業して、2017年の7月で10年目を迎えるバリューブックス。中村さん、めちゃくちゃ腕利き経営者では?!
お話を聞く前に、倉庫を案内していただきました。
「当たり前ですけど、どこを見渡しても本だらけですね…」
「全倉庫合わせて、1日に査定のために全国から送られてくる本が2万冊。Amazonから注文された本を1万冊配送しているんですよ!」
「1日で2万冊!本の循環が活発すぎる…」
バリューブックスが所有する倉庫は全部で3つ。
今回訪れたのは、元ホームセンターで900坪の広さを持つ「上田原倉庫」です。
1日6000冊の本が全国のAmazonユーザーに配送されるメインの倉庫なのです!
倉庫内の本には発行日順に番号が振られ、大型、単行本、文庫本の3サイズで分類されています。本棚に並んでいるジャンルは全てまぜこぜ。
「倉庫内での作業は、大きく分けて査定・出品・配送の3つ。ここでは、査定の業務をしています」
「どうやって査定金額を出しているんですか?」
「Amazonを参考にしています。このパソコンからAmazonにアクセスして査定金額がでるようになっているんです」
こちらではAmazonへの出品業務中。
効率よく出品できるよう、キータッチひとつで本の状態が入力できる便利なシステムです。
「あれ、ここで本の販売も行っているんですか?」
「はい、毎週日曜日に倉庫を開放して、本の販売も行っています」
「単行本は2冊で100円、マンガは4冊で100円…?破格すぎる」
ドラマ化などで話題になった原作本は、ブームが過ぎ去ると手放してしまう人も多い。
マンガは単品の買い取りは作業数が増えてしまうため、基本的にはセットでの査定。
働きたくなくて始めた「せどり」で年商◯◯万?!
「そもそも、バリューブックスはどういった経緯で立ち上げられたんですか?やっぱり本が好きだから…?」
「僕、大学卒業して働きたくなかったんですよね…」
「えっ?」
「東京の大学に進学して、22歳で卒業したけど就職したくない気持ちが大きくて。卒業は決まったけど食べていくにはどうしようか考えていたんです」
「私も大学4年の12月まで就職活動をまったくしていなかったのでなんとなくわかりますが…」
「資格もないし、お金もないしで悩んでいた時、ちょうどAmazonが日本に入ってきて認知され始めたころだったんですよ」
「そのタイミングで本を売り始めたんですか?」
「はい、当時はまだAmazonマーケットプレイスへの古本の供給が追いついていない状況で。自分が持った本を試しに売ってみたら、すぐに売れて驚きました!」
「今のメルカリみたいな感覚ですね」
「そうそう、まさにそういうイメージですね。大学時代の教科書や読んだ本を出品したら、次から次へと売れて。次に本を仕入れるために古本屋チェーン店へ行くようになったんですよ」
「それって、いわゆる『せどり』ってやつですか!」
「そうです。例えば100円コーナーの棚で価値のある本を探す。Amazonで他の中古販売価格を調べて…販売するという流れですね。大学卒業後の2年間は、個人事業主としてせどりをやっていました」
「なるほど。価値のある本を見極める知識が必要ですね」
「安く仕入れて高く売る。商売の基本ですし、トレジャーハンティング的な魅力もありました。でも、店員さんからの冷たい視線もあって精神的に辛かったこともありましたね…(笑)」
「私のイメージですけど、せどりって苦労の割に稼げないのでは…?」
「最終的に稼いだのは年商ベースで8000万円くらいかな」
「年商8000万円!?」
「その頃になると、友達と5人くらいで本の調達から配送までを行っていましたね」
「おお!バリューブックスの前身ですね!」
「そう。地元・上田市に倉庫を借りて、古本屋で買った本の配送を高校の同級生に手伝ってもらったんですよ」
せどりをしていた中村さんが目をつけたのが「専門書」。
当時中村さんは、古本屋チェーン店が50円や100円で買い取っていた専門書を1000円や2000円で買い取れば差別化できるのでは?と思ったそうです。
店舗での販売だとなかなか需要に結びつかない専門書も、欲しい本を自由に検索できるネット上では需要があるため、高値で買い取ることが可能なのだとか。
古本の流通を広げていく
「起業してから10年間、変わらずAmazonに軸足を置いて事業展開されてきたんですか?」
「販売は今でもAmazonに依存しているところが大きいのですが、本の流通・販売場所に目を向けるようになりました」
「と言うと…?」
「流通面でいうと、専門書を出す中小出版社5社の本が売れた時に、売上の33%を出版社に還元するという取り組みです」
「ニュースで見ましたよ、その取り組み!」
「古本の流通で出版社と提携するのは業界で初めてのことなんですよ」
「提携するのは、どんな5社ですか?」
「英治出版、アルテスパブリッシング、ミシマ社、夏葉社、トランスビューの5社。読者に長く愛され、書籍を絶版にしないようなコンセプトを持って本をつくる出版社です」
「愛される本をつくる出版社に古本の売上も還元って、いい循環が生まれていますね…」
「ベストセラーももちろん素敵なことですけど、長い目線で本づくりをしている出版社と一緒に『短期的に売れたらOK』だけじゃない世界をつくっていきたいよねという話から始まった取り組みなんですよ」
「本好きだからこその取り組み…」
「NPOを通じて本の買い取りを行う『charibon(チャリボン)』という取り組みも始めました」
「NPO!なんだか一気にネットからリアルなつながりに…!」
「資金調達をおこなっていかなければいけないNPOですが、『支援金お願いします!』の呼びかけばかりだと疲れてしまいます」
「確かに、お金お金言うのは嫌になってきそう」
「そこでお金の代わりに、NPOの方々に古本の寄付を募っていただきます。集まった古本の査定相当額をNPOの活動資金として還元する取り組みを始めました」
「なるほど!古本だとNPOの方々も気負いせず、呼びかけやすいですね」
さらに2015年には、上田市内にブックカフェ「BOOKS & CAFE NABO」を立ち上げました。店内に並ぶのは、もちろんバリューブックスが取り扱う古本。
「古本屋を開業したい!」と古本の卸の相談を受ける機会が増えた中村さんが、古本の販売をネット上からリアルな場所へ広げる実験の場でもあります。
毎日イベントの開催をおこなったり、パンの販売をおこなったりすることで、地域の人が足を運び、本との関わりを持つ工夫も施されています。
他にも、
- 買い取れなかった本の一部を老人ホームや児童館などの施設に寄付する『book gift project』
- 古本屋の開業へのアドバイス
- ブックバスを購入して、本屋や図書館のない地域を廻る
など、バリューブックスではネットの販売を超え、本に関わる実験を数々行っています。
スタッフが得る「働いている実感」
「『charibon』や『book gift projec』は、バリューブックスの従業員にとってもプラスになる取り組みだと思っています」
「従業員の方にとってですか?」
「ネット上での本のやり取りばかりだと、どうしても社会との関わりが希薄になってしまいます」
「Amazonで本を買った人も売った人も、直接顔が見えるわけじゃないですもんね」
「例えば、『book gift project』でうちから寄付した本が、おばあちゃんの通う老人ホームに置いてあったら、孫がおばあちゃんにほめられるみたいな環境が増えると思うんです」
「想像しただけで泣ける」
「むりやり会社でほめようじゃなくて、従業員が社会や家族からほめられることが増えたらいいなって思っています」
現在バリューブックスの倉庫では、アルバイト・パート合わせて400名を超える方々が働いています。年齢層は16歳から63歳までと幅広い!
バリューブックスでパートとして働き始めてから2年弱の水野恵魅さんにもお話を伺いました!水野さんは現在、倉庫内でのパート・アルバイトの管理、新人のフォローをおこなっています。
「バリューブックで働いてみていかがですか?」
「子どもが熱を出してしまった時や一日の休みではすまないような事態にも臨機応変に対応していただけているので、本当に助かっています…!プライベート面も大切にしてと言ってくれる会社なのでありがたいです」
「なんという優良企業…!ちなみに、水野さんは元々本は読みますか?」
「ここで働くようになってから本を買うようになりました。Amazonで古本を登録したりしていますから!自己啓発本を読んで刺激を受けています。ただ、一日に200冊以上の本に触れるので、タイトルを忘れちゃうことがあります(笑)」
他の方にもお話を伺ったのですが、ママ友の紹介で働き始めた方が多いとのこと。本に囲まれた空間の中で働いていたら水野さん同様、働いているうちに本に興味を持つ方も沢山いそうですよね。
ミッションは、“誰もが本を読める環境を整えること”
「バリューブックスは『日本および世界中の人々が本を自由に読み、学び、楽しむ環境を整える』というミッションをかかげているんです」
「めちゃくちゃかっこいい!」
「誰もが本を読める状況をつくって、持続可能なものにしていきたいんです!」
「ミッションに対して、これから新しく着手する事業はあるんですか?」
「これまで僕たちはネットで本を売ってきました。本と関わる場所といえば、図書館も人が本と関わる重要な存在なんですよね。後々は、図書館へのサービスを考えたり、ヒントとなるようなこともしていきたいと考えています」
「中村さん、本めちゃくちゃ好きじゃないですか…!せどりから始まり、本をお金儲けの対象だと思っているのかと…。すみませんでした!」
「ひどいこと言うなぁ(笑)」
まとめ
古本の可能性を最大限に引き出し、ぐんぐん社会を巻き込んでいく中村さん。
Amazonでよく見かけるバリューブックスは古本の売買だけでなく、古本を介して社会をよりよくする仕組みづくりも行っていました。
この記事をご覧の方の中にも、バリューブックスに本を買い取ってもらったことがある方がいらっしゃるのではないでしょうか。
読み終わった不要な本も、どうせだったら捨てないで買い取ってもらうのも手。
さっそく私も不要になった本をバリューブックスに持っていこうと思います!
@ad_valuebooksバリューブックスから届いた詰将棋の本に、お孫さんがお婆さんに宛てたらしい手紙が挟まっていました。本はともかく、手紙は元の持ち主にお返ししたい気がするんですが……どなたか売ったのか、分かるもんでしょうか? pic.twitter.com/TKsgaSOBdx
— 竹内くろべー (@kurobey) 2017年6月3日
ご連絡遅くなりまして申し訳ございません。
— バリューブックス (@ad_valuebooks) 2017年6月7日
こちら元の持ち主の方が判明しました!!
今回のご報告、誠にありがとうございます。
つきましては、度々お手数おかけし大変恐れ入りますが、着払いでお手紙を弊社に送付願えませんでしょうか?
後ほどDMで住所等を送らせて頂きます。
神対応に感動しました…。
(おわり)
■BOOKS & CAFE NABO
■バリューブックス10周年特設サイト
書いた人:ナカノ ヒトミ
1990年長野県佐久市生まれ。
長野↔東京で二拠点生活の実験中。
twitter: @jimonakano/個人ブログ: ナガノのナカノ