みなさん、こんにちは。ライターのナカノです。
突然ですが、みなさん街歩きは好きですか?
私は大好きです。
「街歩き」で私が思い浮かべるのが、清野とおるさんの漫画『ウヒョッ!東京都北区赤羽』。
著者である清野とおるさんが、東京都「赤羽」の街で生活する面白い人や場所を掘り下げていく本作。
この作品を読んで、一度も降り立ったことのない赤羽に引っ越したいと本気で思いました。登場する人や場所の魅力が、それはもうギュギュッと詰まっているんです。
私も自分がゆかりのある街を、まだ見ぬ誰かに好きになってもらいたい〜!!
そこで今回は、私が普段働いている「長野県上田市」のディープスポットを紹介させてください。
時間の感覚を奪われる異空間!
改めまして、風に吹かれてこんにちは。ライターのナカノです。
本日やってきたのはこちら『喫茶 故郷』。
会社の先輩に教えられて初めて足を運んだ時、びっくりしました。
自分が今どこにいて、何をしているのかわからない感覚に陥ったんですよ。
絶妙な色使いやフォント。
縦横無尽に伸びている草木にアートを感じざるをえません。
中の様子を一切遮断している茶色のカーテンにより、足を踏み入れるのをためらってしまう…。が、勇気を出して入ってみましょう!
カランコロン〜♪
おばあちゃんち感がすごい。
小学生の頃、よく海や山に行っていて。おばあちゃんにお土産を買って帰ったことをふと思い出しました。おばあちゃんって、買って帰ったお土産をみんな並べて飾ってくれるんだよなぁ。
注文をしようと思ったけれど…
「いらっしゃいませー。はい、ちょっと待っててくださいね」
席に着き、メニューを待つ。
店内に流れるクラシックのせいか、明かりのせいか、すでに脳がとろけそうな眠気が…。
「はい、お待たせしました〜」
「え?」
「頼んでないです!」
「まぁまぁ、いいからな。ほら食べて、飲んで」
「え、あ、はい」
- コーヒー
- しそ茶
- ゆで卵(固ゆで)
- カール(6粒)
多分このお店でしかみることのない組み合わせなのではないでしょうか。
とにかく色々聞かずにはいられない
色々聞いてみることにしました。だって気になるんだもの。
「あの故郷って店名は、お父さんがつけたんですか?」
「いやあ、この人がつけたなぁ」
「あっ、お母さんがつけたんですね!」
「喫茶店を始めるってことで、どういう名前をつけようかなぁって考えたんですけど、人は誰しも故郷のことを想いますから。私自身も故郷が好きなので、お店の名前にしました」
「お母さんの故郷は上田なんですか?」
「いや、私は岐阜県の出身なんですよ。こっちに嫁いできたんです。この辺の近くで親戚がやってた喫茶店を手伝ってから独立したんですよ。このお店をオープンしたのは、40年前くらいですね」
「40年前といえば1970年代ですよね。長い年月を経て、客層に変化はありましたか?」
「うーん。開店当時からいらっしゃったお客様は亡くなった方もいらっしゃいますからねぇ」
「そうか。長年お店をやっていると、そういう事態も起こるんですね…!」
「一生懸命通ってきてくれた人はみんないなくなっちゃったからなぁ。あぁ。世の中っていうのはな〜。今度は自分の番だな、早いもんだな、早いもんだ…」
「まだ諦めないでください」
「今、上田は大河ドラマの影響によって観光客がごった返していると思うんです。いわゆる真田丸フィーバーってこのお店にもありますか?」
故郷から歩いて20分のところにある上田城。
城内に期間限定でオープンした「信州上田真田丸大河ドラマ館」には60万人を超える来場者が。とんでもないフィーバーを巻き起こしています。
「みんな喫茶店には寄らないわ。パーッとバスでやってきて、上田城に行って食事をして帰っちゃうなぁ」
「そうですね。お客さんが増えたかというと、そんなことないですね」
「うーん、確かに観光バスや車で来る方が多いから、歩いてお店に立ち寄ることってあんまりないんですね。せっかく上田に来てもらってもぱぱっと帰ってしまうのは寂しいです…」
一瞬の表情がコミカルすぎるお父さん。好きだな〜!
開店してから40年経つけれど
「あの、メニューについてお聞きしてもいいですか。どうしてこの組み合わせなのでしょうか?」
「あ〜そんなもんはな、いいだいいだ」
「え?」
「あの、お父さんが内容を決めたんですか?」
「決めたじゃねぇだ」
「あれ、じゃあお母さん?」
「ひとつ飲んでいただければサービスで出しているんです。その時によってものは違うけど、卵も出してますね」
「は、はぁ…。あ、でも、おかげさまでお腹いっぱいになりました! ちなみにメニューはないんですか? 座ったらいきなりセットが出てきてびっくりしちゃって」
「みんなね、メニュー見せてくださいって言わないですから」
「えっ、新鮮。じゃあ言えば出してもらえるんですか?」
「いやぁ、大体お客さんコーヒー頼むじゃないですか。だからメニューがなくてもいいんです。でもね、一応ほら、あるんですよ」
「(なんだか設定が難しい…!)」
「あっ、本当だ。ちゃんとメニューがあったんですね!」
「そう、開店当初のメニューです。ここには書いていないけれど昔はカクテルもやっていたんですよ」
「えー!アルコールも提供していたんですね。どうして今はアルコールの提供を行っていないんですか?」
「商品ってのは、色んなものを出すと失敗しちゃうんだよ」
「そう。だからメニューは一つで勝負なんですよ」
「いきなり阿吽の呼吸で商売論が…! 深いようで、なんだか矛盾しているような気も…。コーヒー、しそ茶、紅茶、お菓子にゆで卵まで…。これだけ沢山出てきて値段はおいくらなんでしょうか…。600円? 700円くらいですかね?」
「300円だよ。うちは40年間変わらず300円!」
「えっ!安すぎる!!!」
この日訪れたのは2回目だそう。支払いをしようとすると、お母さんから「今日は1回目でお金もらったから払わなくていいよ」とのこと。どういうこと?! 飲食店の常識はどこへいっちゃったの!?
「いやあ、欲があるとよくないなぁ。何事もまじめに堅実にな。小さい銭稼いでやってく人が成功するのかもしれないな」
「良いこと言う〜。コツコツやってくことが大切なんですね」
「ああ、そうだなぁ。俺は16年生まれだからな、まだこんなガキだったんだよ。12月8日に太平洋戦争が始まっちゃってさ。うすうす覚えているけどな…あぁ…」
「?! お父さん?」
「うーん、そんなようなもんだな、うん。旧ソ連とアメリカがな、あぁ…」
「回想しないで〜!!」
「あと、そうだ…。セブン、イトーヨーカドー、そごうってな。これからはこんな風に進んでいくよってどんぴしゃだ…ああ…」
「おとうさーん!!!」
まとめ
気づけば3時間半も居座ってしまった。あまりにゆったりしていて、時間の概念が奪われる。とんでもない異空間に飛び込んだ気分です。
でも、思い返してみると時間を気にせずコーヒーを飲む機会って貴重かもしれません。
カフェに入る時、1杯のコーヒーの値段=作業をするための場所代と考えることもしばしば。
電源が使えてWi-Fiも飛んでいる使い勝手のいいチェーン店もいいけれど、たまにはパソコンの電源を落として、何も考えずふらっと喫茶店に立ち寄るのもいいかもしれません。
長野県の上田に来たら、話好きな故郷のお父さん、お母さんがあなたを待ってますよ…! 真田丸のついでに立ち寄ってみてくださいね!
帰り際にゆで卵をいただきました。
●喫茶 故郷
住所:長野県上田市中央3-11-15
電話:0268-24-2706
営業時間:10時〜21時ぐらい(日によって変動有り)※不定休
https://tabelog.com/nagano/A2004/A200401/20008411/
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書いた人:ナカノ ヒトミ
1990年長野県佐久市生まれ。最近、意識的に散歩をはじめた。
twitter: @jimonakano/個人ブログ: ナガノのナカノ