Quantcast
Channel: イーアイデムの地元メディア「ジモコロ」
Viewing all articles
Browse latest Browse all 1396

【すするか、すすらんか。】大学生がノリではじめたラーメン店が、若者の選択肢を増やす

$
0
0

【すするか、すすらんか。】大学生がノリではじめたラーメン店が、若者の選択肢を増やす

いきなりですが、見てください。この麻婆豆腐に……

 

チーズを載せて……バーナー!?

 

こんがり炙って……

 

麻婆豆腐かと思いきや、下にはラーメンが。思い切りすすると、熱くて辛い……けど美味い!

 

ついついラーメンに夢中で、自己紹介を忘れていました。ライターの長崎航平、20歳です。

ジモコロ編集長の柿次郎さんと一緒に来た奈良のお店で、いきなりインパクトのある料理と遭遇しました。

 

このお店、店名もインパクト抜群。その名も、

すするか、すすらんか。」

 

お店のツイートも、かなり熱いです。

 

「すするか、すすらんか。」を経営するのは、地元の大学生たち。

 

写真左から3番目が、店長の西 奈槻(にし・なつき)さん

 

上の写真に写るのは運営メンバーたちですが、いかにも勢いがありそう。

大学生が起業した飲食店で、メニューもインパクト大。テレビでの取材も多数受けており、以下はその一部。

『なるみ・岡村の過ぎるTV』『かんさい情報ネットten.』『コロコロチキチキペッパーズのやっべぇぞ!』『サタデーステーション』『ミント!』『ぐるっと関西おひるまえ、ならナビ』『ならコレ!』

 

人気を集める「すするか、すすらんか。」ですが、実は、老舗企業の「中川政七商店」や、店長である西さんの通う近畿大学も、このお店を強力サポートしているそう。

 

なぜ大学生が飲食店を経営? しかもどうしてラーメン屋さん?

店長の西さんをはじめ、スタッフの方々から溢れ出る熱の根源は?

どうして大学、さらには地元の老舗企業までがこのお店をサポートしているの?

 

気になるところが多すぎて、西さんにZoomで取材しました。

 

ラーメン屋を始めたのは、ただのノリ!?

「同世代ということで、西さんのことが色々気になってます。よろしくお願いします」

「なんでも聞いてください」

「まず、ほんとに美味しいラーメンでした。『すするか、すすらんか。』というインパクトのある店名も含めて、よほどラーメンにはこだわりがあるのでは?」

 

「ありがとうございます。けど、僕がこのお店を始めたきっかけは、一言でいうと『ノリ』なんですよ

「ノリ……?」

コロナで友達に会えなくなって、暇になって。自分の将来について考えるようになった……というか、向き合わされたんです」

「僕は大学に行ってないですけど、大学に行った同世代はみんなリモート授業になって、飲み会とかも全然できないって言ってましたね」

「そうですよね。それで『このままじゃ楽しくないな。じゃあ何かしよう』となったのが始まりです」

 

「ラーメン好きだったとか?」

いや、とりあえず何かしたかったんです。でも何したらいいか分からんから、人に会いまくってたら、今のお店の大家さんと知り合いました。『自分、なんかしたいんすけど、何したらいいかわかんないんすよ!』と言ったら、『じゃあお店やりいや』と

「(全然ラーメンが出てこないな……)」

「それで、その日のうちに『やります!』って返事をして。すぐに同級生だった奥野に電話して、『俺、料理できひんからお前の麻婆豆腐で店やろう!』みたいな」

 

 
 
 
 
 
この投稿をInstagramで見る
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

すするか、すすらんか。(@susuruka_susuranka)がシェアした投稿

「奥野さんは『すするか、すすらんか。』の料理長ですよね。麻婆豆腐が得意料理だったんですか?」

「そうっすね。けど、ただの麻婆豆腐じゃ面白くないしなぁ、と。そこで思い浮かんだのがラーメン。奈良といえばラーメンでしょ、みたいな思いで麻婆豆腐と組み合わせて、麻婆豆腐ラーメンは生まれました」

「ラーメンの上に載ってる『炙りチーズ』も印象的でした」

「炙りチーズも、ほんまにノリなんすよ」

「え!! また??」

「若者ってチーズ好きじゃないですか(笑)。炙ったらうまそうなんで炙ってみたら、ほんまに美味かったんです

 

麻婆豆腐ラーメンを紹介したツイート

 

「ノリと勢いでスタートしたのが伝わってきます(笑)」

「店を始めたころは、難しいこととかあんまなかったかもしれないですね。やるしかない環境に自分を追い込んで、とにかくやる、って感じだったので」

「おお、じゃあここまで立ち止まることもなく?」

「いや、すんません、難しいことありました(笑)。店をノリで開けたんはいいけど、だんだん何で俺ラーメン屋やってんねやろ? って考え始めちゃって

 

「ラーメン屋がやりたい! ではじまったわけじゃなかったですもんね」

「言ってしまえば僕、手段から入ってるんですよね。そこに目的がないと辛いな、ってやりながら感じ始めたんすよね」

「お店をやる、が目的になってしまっていた」

「開店当初は店名も違ってたし、コンセプトも今みたいにはっきりしてませんでした。お店を開けてから、自分のほんとにやりたいことが上手く言葉にできずモヤモヤしてたんです。ただそんな時に、中川政七商店さんに出会って

 

奈良で300年以上の歴史を持つ企業が、大学生のコンサルをはじめた理由

怒涛のスピードで開店に至った西さんのお店ですが、「自分がそもそもやりたいことは何だったっけ?」という問いにぶつかってしまったそう。悶々としていた西さんが出会ったのは、奈良の企業「中川政七商店」

 

中川政七商店は江戸時代に麻織物の卸問屋からスタートし、現在では工芸をベースとした生活雑貨を取り扱う企業として、全国に店舗を展開しています。

 

現在の「すするか、すすらんか。」へとお店が至るまでには、中川政七商店の存在が大きかったそう。西さんとプロジェクトを進めていった中川政七商店を代表して、井上公平さんにもインタビューへ参加していただきます。

 

「井上さん、よろしくお願いします。中川政七商店さんは、西さんのお店をどのようにサポートされてきたんですか?」

「まずは管理会計の考え方など経営のベースになる知識をお伝えして、その後は西くんたちが目指していきたいビジョンを言語化するためのサポートですね。その上で目指すべき具体的な数字の話を一緒にしたり、SNSの『clubhouse』で、代表の中川政七と一緒に公開コンサルをしたりしたこともありました」

「なるほど、コンサルとして!」

「一般的に言えばコンサルみたいな感じですが、中川も僕も、西くんたちの熱意を感じて純粋に応援してる気持ちが強いですね

「たしかに先ほどから話していても、西さんの熱をすごく感じます。では初対面から『ガッツあるな!』みたいな印象でした?」

第一印象は……良くも悪くも若者らしさがあるな、という感じでしたね」

 

「僕、最初に中川政七商店の本社へ行く時、ちょっと遅刻しちゃったんですよ。しかも、原付を停める場所も間違っちゃって……あのときはすんませんでした!」

「なので、ちょっと大丈夫かな? というのが正直な印象でした(笑)。でも、話していくうちに変わっていきましたね」

「どんな変化が?」

「中川も同じように言うんですが、実際に会って話していくと、西くんからは素直さとがむしゃらさを本当に感じるんです。上手くいかないときでも、がむしゃらに手数で勝負して改善していく」

「不器用にもラーメンやってますけど、別にお金儲けが目的ではなくて。『自分、ほんと人の心動かすんが好きっす!』みたいなことをずっと言ってた記憶があるっすね。そういうところにも共感してもらえたのかもしれないです」

「でも、どうして工芸にまつわる会社が、大学生のラーメン屋さんをサポートすることに?」

「中川政七商店として、『日本の工芸を元気にする!』をビジョンに掲げ、2007年くらいから自分たちだけではなく日本の工芸全体を元気にするために活動してきたんです。でも工芸を元気にするためにはメーカー1社だけではなく、産地を支える街そのものが『いい街』にならないと続いていかないよね、と気づいて」

 

中川政七商店では奈良のまちづくり 「N.PARK PROJECT」と名づけ、コワーキングスペース「JIRIN」の設置や経営・ブランディング講座の開催など、さまざまな活動を行なっている

 

「工芸を盛り上げるためには、『工芸だけ』を盛り上げるだけじゃダメってことですね」

「はい、つまり『まちづくり』の領域です。それを工芸業界にも呼びかけているなかで、まずは自分たちが地元の奈良でやってみせようとなりましたいいお店を増やすことで街がげんきになると考え、地元のお店をサポートしはじめて、そのひとつが西くんのお店だったんですね」

「やっと繋がってきました」

「なので井上さんをはじめ、中川政七商店の方たちとMTGしながら、僕の向かっていきたい方向や、そもそも何をやりたかったかの言語化を一緒にやっていきましたね」

「店名も、このタイミングで現在の『すするか、すすらんか。』になりました」

「西さんとしても、ここで当初のモヤモヤも消えたんでしょうか?」

「そうっすね。迷いがなくなりました。ちなみに、ぼくの通っている近畿大学にもサポートしてもらっていて」

「近畿大学はどんなサポートを?」

「大学のキャンパス内にお店を出させていただいていて、そこにかかる設備費も負担してもらっています」

 

毎日放送で「近大をすすらんか。」を取材した映像

 

「設備費の負担まで!?」

「大学の姿勢として、学生の起業を応援してくれていて。中川政七商店さんや、近畿大学にはすごく感謝してます。やっぱり、周りの大人の人たちの力ってめちゃくちゃデカいので。他の大人と繋いでもらったりもしてますし」

「例えばどんな方と出会えたんですか?」

「代々木上原にある『sio』のオーナーシェフ・鳥羽さんです」

 

こんなツイートを発見。鳥羽さんは、過去にジモコロにも「海賊シェフ」として登場している

 

「店に来てうちの麻婆豆腐ラーメンを食べて、『このメニューに冷やしピーマンが合う』っていうのを、的確にロジカルにご指摘いただいたんです」

「あの冷やしピーマン、気になってました。鳥羽さんのアイデアだったとは!」

 

ラーメンと一緒に出てくる、氷水に浮かべたピーマン

 

「僕らには鳥羽さんみたいな料理に関する頭脳や知識はないんで、迷わず『はい、やります!』ってすぐ導入しました」

「中川政七商店のコンサルもそうですけど、単なるノリや勢いだけじゃなく、大人のアドバイスを積極的に取り入れるのも、西さんのよさかもしれないですね」

「そういう柔軟さは、西くんの強みだと思います」

「やっぱ大人の方達って僕らより色んな選択肢持ってはるし、人生の大先輩でもあるじゃないですか? 僕らが成長する上で、そういう人たちに機会をいただいたりするのが一番早いと思うんですよね」

「西さんの大人との付き合い方論、面白いな…井上さん、ありがとうございました!」

 

井上さんのお話も伺ったところで、改めて西さんへのインタビューを続けていきます。

ラーメン屋をやってる目的は、あくまで「若者の選択肢を増やす」ため

「ずっと気になってたんですが、インパクトのある店名『すするか、すすらんか。』の由来は何なんですか?」

「僕がいっつも言ってた『やるか、やらんか』という口癖からですね。全ての物事って、『やるか、やらんか』の二択で片付けられると思うんすよ。『できるか、できないか』ではなくて」

「『できるか、できないか』ではなく『やるか、やらんか』?」

「例えば僕が東大に入りたかったとしますよね。そしたら『東大に入るか、入らんか』じゃないですか? 別に入るまでやったらいいし、できるか、できないかではないと思うんです」

「すごいマインドだ。めちゃめちゃ強気……」

ただ、そこでやらない人を否定するつもりはないですよ。『やるか、やらんか』の二択で、後者の『やらない』も、あくまで選択肢の一つなので」

「『やれ』と強要してるわけじゃなく、選択肢を提示している。店名も『すするか、すすらんか。あなたはどっちですか?』ってことなんですね。ちなみに西さんの口からよく『選択肢』という言葉を耳にしますが、なぜなんでしょう?」

僕、自分たちの行動を通じて日本の若者の選択肢を増やしたくて。ほんとに色んな若者が自分らしく人生楽しんだら、もっと楽しくなるのにな、って思うんです」

 

 
 
 
 
 
この投稿をInstagramで見る
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

すするか、すすらんか。(@susuruka_susuranka)がシェアした投稿

「大学で周りの人をみてると、大体3、4年生になると『しなきゃいけない』から就活をして、企業に入って……みたいに感じるときがあるんです。もちろんその選択肢もありだとは思うんですが、もっと他の選択肢もあるのにな、って」

「だから自ら、一つの選択肢になろう、と?」

「はい。でも、僕みたいな人間をたくさん作りたいわけではなくて、今よりもっと選択肢が増えて、その選択肢を自分で選べる若者を増やしたいんです」

「西さんの今の活動は、日本の若者に選択肢を増やせていると思いますか?」

「いや、まだ全然足りてないです。僕は、こんな感じでラーメン屋以外にも、ほんと全業種やろう、ってスタンスなので。」

「えーー!」

「だから、4月には『やるか、やらんか。』という名前で、株式会社を設立しました。ここからが本当の勝負っすね」

 

「だって、こんな選択肢もあるって口で言うのは簡単ですけど、その選択肢を自分で示してないのはダサいじゃないですか?」

「確かに。でもこのインパクトのある店名や、大学生という肩書きから、周りからよく思われないこともあるんじゃないですか?『本気でラーメン屋やってんのか?』とか」

「同業者さんに『自分らラーメン舐めすぎやで』とか言われたこともあります。でも自分らにあるリソースで戦うために、そこを気にしていてもしょうがないよな、と。だから固定観念ぶっ壊す気持ちでやってます。若者に選択肢を示すのに、大人たちと同じやり方でやっても意味ないじゃないですか?

「俺らは俺らのやり方で、土俵がそもそも違う、みたいな?」

「そうです。ただ別に否定もしてない、むしろめっちゃリスペクトしてますね。同業者の方のやり方も一つの選択肢で、僕らも一つの選択肢なんで。でも今、こっちの選択肢がないから批判されるし、間違ってるって言われる」

「あくまで、選んだ道が違うだけ、と」

「選択肢に間違ってるってないと思うんですよ。それは個人の価値観なんで。だから、僕らは自分たちの選んだことをやるだけっす」

「選択肢に間違ってるはない、か……」

 

取材を終えて

「やるか、やらんか。」

西さんが取材中に何度も口にしていたこの言葉。「僕はほんとにやれてるんだろうか?」となんだか、同世代の僕にも問われているような気がしてなりませんでした。

 

数ある選択肢の中から、常に自分の目指す先へと向かうための選択をしている西さん。そんな姿勢が、もう既に一つの選択肢になりつつあるのかもしれません。

 

あー、僕もまだまだ頑張らないと!!

 

 

シリーズ『若者がすべて』始動

本日5/11でジモコロは7周年を迎えました! いつも応援していただいている読者の皆さん、本当にありがとうございます。
 
7年目のジモコロでは、今回の記事から日本全国で活躍する10代〜20代の方たちを取材していく特集『若者がすべて』をスタートします。若者のすべてじゃないです。もうこんな時代だからこそ若者がすべてなんです。
 
全国47都道府県で「この若者を推したい! なぜなら、すべてだから!」と推薦してもらえたら嬉しいです。向かうべき方向性とスタイルを確立している若者がいま、全国でどんどん台頭してきているのは間違いありません。ジモコロのインスタマガジン『Re:Youth』と連動できたらいいなと思います! 乞うご期待!
 

Viewing all articles
Browse latest Browse all 1396

Trending Articles