こんにちは、ライターのギャラクシーです。上の写真は35年前、小学6年生の時の僕です。
小学生の頃の楽しみといえば―教科書の隅にパラパラ漫画を描いたり、消しゴムと定規でホッケーをやったり、授業中にこっそり手紙を回したりと色々ありましたが……
なんといっても一番楽しみだったのは、
給食ですよね。
そんなにおいしいわけではなかったけど、成長期だったからとにかくオナカがすいて、給食の時間が待ちきれなかった。
今の子も同じなのかな? そう思って軽く調べたところ驚きの事実が判明しました。
え?
は? そんな馬鹿な……
嘘ぉぉーーー!!??
どうやら今と昔で給食事情は大きく変わってるようです。
というわけで、実際に学校給食を作っている「NECライベックス」さんに詳しく聞いてみることにしました。
▼登場人物
調理師|好きな給食のメニューは「唐揚げ」
調理補助|好きな給食のメニューは「ラザニア」
調理補助|好きな給食のメニューは「ハヤシライス」
管理部門|好きな給食のメニューは「カレー」
ライター|好きな給食のメニューは「きなこパン」
※今回のお話はあくまでNECライベックスさんが担当する学校での話です
今の給食ってこんな感じ
「最近の給食がめちゃめちゃおいしいという噂を聞いたんですが、本当ですか? 正直に言うと、給食って『オナカが減ってたからおいしく感じていた』みたいな認識です」
「昔の給食は確かに『決してまずくはないけど、おいしいというほどでもない』という感じだったかもしれませんね。でも今の給食は本当においしいです!」
「働いている私たちも、昼食は児童と同じ給食を食べるんですが……初めてハヤシライスを食べた時びっくりしました。ハヤシライスってこんなにおいしいものだったんだ!って」
「カレーやハヤシライスはルゥを使わず、小麦粉を炒めてスパイスを入れてって感じで、本格的な味ですよ」
「店じゃん!」
「洋食は鶏ガラからダシを取ってるし、お味噌汁もちゃんとかつおからダシを取ってます。すごく手間がかかってますよ」
「店じゃん!!!」
「食材も良いものを使ったりするんです。学校によっては“和牛”とか……」
「地産地消を心がけているので、その地域の良い食材を使ってるんですよ」
「ということは、東北や北海道だと新鮮な魚介類が使われたり、静岡だとウナギが出てきたり……?」
「私には他の地域のことはわかりませんが、そうかもしれませんね」
「実際、『ご当地メニュー』と言いますか、その地域特有のメニューは存在してますよ。
広島:美酒鍋
└肉と野菜を日本酒と塩・こしょうで調理した鍋(アルコールは抜けます)
福岡:がめ煮
└鶏肉や根菜を煮込んだ筑前煮のような料理
山口:岩国ずし
└押し寿司。見た目はちらし寿司のような感じ
群馬:焼きまんじゅう
└まんじゅうを竹串に刺し、味噌ダレを塗って焼いたもの
奈良:飛鳥汁
└鶏肉や野菜の入った味噌汁に牛乳を加えた汁物
などがそうですね」
「大人になってから、“ふるさとの味”として思い出せる給食、良いな~」
「あと今の給食はとにかくメニューが豊富。昔は無かった料理も普通にあります。私はラザニアが一番好き」
「学校の給食でイタリアン出てくるの!?」
「イタリアンどころか、世界各国の料理が出てきますよ」
「せっ、世界!?」
「中華料理なら餃子とか油淋鶏とか実際あるんですけど、まあそういうのは想像つくじゃないですか。でも大人でも食べたことがないような国の料理とか……」
「そうそう、こんな料理初めて見た!っていうのとかあるんですよ。例えば、ミティティって知ってます?」
「『品川庄司』の庄司のギャグ?」
「違います! ミティティはルーマニアの料理で、香辛料を加えたひき肉を円筒形に焼いたものですね」
「ミ~ティティ~~~~!!!」
「他にもトルコ料理やブラジル料理、フィリピンの料理などが普通に出てきます」
▼その他、給食で食べられる各国の料理
ルーマニア
ミティティ、ムラトゥリ風サラダ、チョルバ・デ・ファソレ
台湾
魯肉飯(ルーローハン)、魚丸湯、オーギョーチ風ゼリー
トルコ
サバサンド、ハブチュチョルパス、バクラヴァ風くるみパイ
ブラジル
ムケッカ、コシーニャ風コロッケ
フィリピン
シナガック、チキンアドボ、シニガン、レチェ・フラン
オランダ
キベリング、トマトゥンスープ
オーストリア
チキンシュッツェル
※繰り返しますが、今回のお話はあくまでNECライベックスさんが担当する学校での話です
「聞いたことない料理ばっかりで笑っちゃう。これ、そもそもの献立スケジュールは誰が考えてるんですか? 調理師の小森さん?」
「いえ、私じゃないです。自治体や学校に一人は栄養士がいるので、その人が献立を考えてます。それを我々のような業者が請け負って調理してるわけですね」
「栄養士さんそれぞれに個性があるので、地域によって学校によって、メニューが違います。変わった料理が出てくる地域や、同じメニューが繰り返し使われる学校もあります」
「僕なら変わった料理を食べてみたいな~。子どものうちから色んな国の食文化に触れるのは良いことだと思うので。ていうか単純にバラエティ豊かな給食って羨ましい」
「でも家でごはんを作る時にプレッシャーはあります(笑)」
「そう!大変よね~!」
「あ、そうか! 給食のレベルが高くなるってことは、各家庭で舌の肥えた子どもが『今日の晩ごはんはミティティ食べたい』って言ったりするってことか!」
「それに関しては……申し訳ありません……」
給食の今昔
「今の給食はメニューが豊富に、しかもおいしくなっているということはわかりました。他に昔と比べて変わったところはありますか?」
「昔の給食って麺類がおいしくなかったじゃないですか。ラーメンとかうどんとか。伸びちゃってて食感も良くないし。でも今は技術がものすごく発達してます。麺とスープが別々になってて、食べる時に混ぜるのでおいしいんですよ」
「ひょっとしたら、昔と今で比較した時、一番おいしくなってるのは麺類かも」
「へ~!」
「あとパンもふかふかでおいしいですよ! ロールパンとかぶどうパンとか、食パンとか」
「じゃあコッペパンもおいしくなってる?」
「……ん? いえ、今はコッペパンって無いですよ?」
「え?……コッペパンが無い?」
「コッペパンを使うのは、揚げてきな粉をまぶした“きなこパン”くらいかな。何もないそのままのコッペパンっていうのは、うちの献立にはないですね」
「今日イチで驚いたかもしれない。給食といえばコッペパンってイメージだった。じゃあ今の小学生はコッペパンの中身をくり抜いて食べたりしないんですね」
「それはロールパンでやります」
「それはやるんだ。パンは種類が豊富みたいですけど、もうひとつの主食、お米はどうでしょう?」
「お米が出るのは週に2~3回かな。パンは完成品が届くんですが、お米はこちらで炊かなければいけないので大変です」
「17釜も使って炊いてます」
「すごい! 僕の時代は給食に米が出るようになった黎明期だったんですが、米飯は週に1回でした」
「今はパンと同じかそれ以上にお米が給食に出てますね」
「ちなみにお米の時の飲み物は牛乳のままですか? 子どもの頃、お米に牛乳って合わないよ~!と思ってたんですが」
「お米の時も牛乳です。月に一回、発酵乳(飲むヨーグルトとかヤクルトのようなもの)が出ます」
「お米と牛乳が合わないという意見もわかるんですが、やはり成長期の体に必要な栄養というのがあるので……ただ、静岡なんかはお茶が出たりしますね」
「給食の時にお茶を飲みたい人は静岡に転校するしかないのか。そういえばミルメークってまだあるんですか? 僕が行ってた学校には無かったんですが、関東では人気だったと聞きました」
※ミルメーク=粉末のコーヒー牛乳の素。牛乳に入れて飲む。他にいちご味なども
「私が担当してる地域では無いですね。ただミルメークそのものは現在も売っていますよ!」
ミルメークコーヒー 120g×4袋
「給食の楽しみといえばデザートですよね。今の給食ではどんなデザートが出るんでしょうか?」
「デザートは本当に豪華になりました。プリンやゼリー、フルーツポンチ、アイスクリームやケーキもあります」
「アイス!? ケーキ!?」
「ケーキなんて3種類から好きなものをセレクトできたりするんですよ」
「貴族じゃん!」
「季節のメニューとして、
十五夜:お月見団子
ハロウィン:パンプキンパイ
冬至:かぼちゃと小豆のいとこ煮
クリスマス:チョコレートケーキ
なんかもあります」
「今の子が羨ましい……」
「昔と今で変わったことと言えば、あとは食器とか?」
「え、今ってアルミじゃないの!?」
「アルミというのはおそらくアルマイト食器(アルミにアルマイト加工をしているもの=耐腐食性や耐摩耗性を高めている)のことですね。それはかなり昔ですよ。年齢がわかっちゃいますね」
「ちょっと前にメラミン食器(安全性が高く長期間使用することができるプラスチック食器)が一般的になりまして、今は東京だと陶器だったりします」
「陶器! でも子どもなんて食器を割るのが仕事みたいなもんじゃないですか」
「今は教室の前まで私たちが給食を運ぶので、その危険は少ないです」
「はい??? 給食室まで取りに行かなくていいの!?」
「そうですよ」
「貴族じゃん!!」
どうやって作ってるの?
「普通のレストランや食堂と違って、給食って一気に、大量に作らなきゃいけないですよね? 何食くらい作ってるんですか?」
「私が担当してる学校だと1200食ですね」
「せっ……1200食! それを一気に作るんだ!」
「だから私たちのような調理補助のパートだけで8人います。それでもすっごく忙しいですね」
「とにかくすべてが巨大なので厨房に入ったら驚くと思います。ます厨房自体がこの会議室より全然広い」
「そうなんです、だから仕事中は厨房内をめちゃめちゃ歩くことになります。私、このパート始めてから3kg痩せました(笑)」
「器材も大きいですよ。オーブンは20段あって一気に何百個も焼けますし、鍋も人が入れるくらい大きい。大きすぎて傾けるのすら難しいので、水飲み鳥みたいに縦に回転するようになってます」
「かき混ぜるしゃもじも武器になるくらい長くて大きいです」
「(もし学校がゾンビに襲われたら給食室で武器を調達しよう……)」
「1200食分なので、食材の量もすごいです。例えばカレーの日だと朝にじゃがいもが60kg届いたりします。人参だと30kgとか」
「皮は機械で剥くんですけど、カットは手作業なので……最後の方は手の握力がなくなっちゃいますね。かぼちゃとか固い野菜は特に大変です」
「え、カットされたものが届くんじゃないの!? 何百個も手作業で野菜をカットするってめちゃめちゃ手間ですね!」
「でも給食の時間をずらすわけにはいかないので、手早くすべての作業をこなさなきゃいけない」
「なので私は6時半に出勤してます。準備だけでも3時間かかるので」
「ヒエー! あ、でも給食が終わればお仕事は終わりですよね? なら労働時間としては短いのか……」
「いえ、終わったら今度は片付けやゴミ出しがあります」
「洗い物も1200食分なので時間がかかります。食洗機はあるんですけどあくまで仕上げ用なので、基本的に人の手で洗ってます」
「じゃあ皆さん、いつも何時頃に帰ってるんですか?」
「私は社員なので、片付けの後も学校側と打ち合わせしたりします。帰るのは15時以降になりますね。つまり普通に8時間労働です」
「ちなみに私は本部勤務なので、普通のサラリーマンの方とまったく同じ勤務形態です。担当地域の社員さんやパートの方の仕事を管理して、学校との橋渡し役になってます」
「佐藤さんと濱本さんは?」
「私たちはパートなので、10時くらいから15時くらいまで、5時間の勤務ですね」
「パートのお仕事として見た場合、給食の調理補助の良い部分とはどこでしょうか」
「最も大きなメリットは休日が学校と同じ、というところですね。土日祝が完全に休みだし、夏休みや冬休みもまるっと休みだから、家族と過ごせる。主婦としては大きなメリットです」
「平日の仕事も15時くらいで終わるので、自分の子どもが帰ってくる頃には家に居れますし」
「あぁ~、確かに! 家族と休みや時間を共有できるって、結構大事かも!」
「あと家で野菜を切るのは異常に早くなりましたね」
「料理のレパートリーが劇的に増えるのもメリットです」
「なるほど。一方、小森さんは社員さんということですが、学校が夏休みの間は何をしてるんですか? スマホゲーでガチャやってるんですか?」
「やってません! その期間は社員食堂を手伝ったり保育園の給食を作ったり、色々と仕事はありますね。とはいえ土日は休みなので、休日に関しては恵まれた仕事だと思います」
「良さそう……僕、ほとんど料理したことないんですが、働けると思いますか?」
「それは調理師としてってことですか? 給食の調理師は、調理師免許や栄養士の資格が必要だったりするので、残念ながら……」
「くっ……」
「調理補助のパートなら誰でもやれますよ! とはいえどの学校でも女性がほとんどなので男性は珍しいと思いますけど」
「ただ、勤務地は家の近所の学校を希望なさると思いますが……同じ学校に自分の子どもが通っている場合、勤務地は別の学校になることがあります」
※学校によって違います
「え、なんで!? むしろ同じ学校に自分の子どもがいたほうが頑張ろうって気になるから良いのかと思った」
「え~!? 子どもと同じ学校で働くなんて絶対イヤだ。仕事してる姿とか見せたくない」
「仕事中に『あ、○○ちゃんのお母さんだ~』みたいに話しかけられたりしたら、私も子どもも恥ずかしいじゃないですか」
「あ、言われてみれば。それくらいの年齢の時って、『友だちに母親を見られる』って、なぜかすごい恥ずかしかったかも」
「仕事をやってて良かったなと感じる瞬間とかありますか?」
「教室まで給食を運んだ時に、児童から『いつもおいしい給食をありがとうございます』って言われたりするんです。やっぱり子どもは素直でかわいいなーって笑顔になりますよ」
「あと学校の行事で児童から手紙をもらえたりするんです」
「どの料理がおいしかった、とか書かれてるんですよ。この仕事やってて良かったって思いますね」
「良い仕事だな~。では、今日はおもしろくておいしそうな話をありがとうございました!」
まとめ
というわけで今回は学校給食を作っているNECライベックスさんに話を伺いました。今の給食って本当においしくなってるみたい!
作っている人たちの努力でこのクオリティになってるってこと、子どもたちが大人になったら気づいてくれるかな……?
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