こんにちは。ライターのたかやです。
強張っている表情からも分かる通り、僕は根っからの「緊張しい」です。
▼たかやの緊張エピソード▼
・人前でなにかをプレゼンする直前は吐きそう。
・人と話すとき、よく声が裏返る。
・誰かとの会話時、顔の脂汗がエグい。
・脇汗もエグい。
・手汗もエグい。
・ゆえに、誰かと会ったあとの自分は臭い。
・待ち合わせ時間が午前中の場合、「寝坊したら死ぬ…」と不安になって徹夜はザラ。
・↑結局、朝方に寝落ち。
・相手の目を見れない(中学からずっとこう)。
・集団面接が嫌すぎて(物理的に人が多いから)、就活では集団面接を避けまくってた。結果、無職。
…などなど、挙げたらキリがない始末です。
こちらはジモコロ編集長のギャラクシーさん。彼もまた、自他ともに認める「緊張しい」です。
▼ギャラクシーの緊張エピソード▼
・会社でみんなの前で何か説明したりプレゼンしたりする時、足が震えてるのがバレないように太いズボンを履くようにしている
・緊張すると汗がすごいので、プレゼンの時は黒いTシャツなど汗が目立たない服を着ていく
・電話に対して極度に緊張するので、中途入社で入ったとある会社で研修としてコールセンター業務をやらされた時、2日で会社を辞めた
ひょっとしてこれって『あがり症』なの? でも『あがり症』ってどこからどこまでをそう呼ぶのか、そもそもどういう状態のことを言うのか、正体がよくわかりません。
・あがり症ってなに?
・どういう人が緊張しやすいの?
・克服できるの?
正体を掴めれば、もっと人生を楽に生きられるかもしれない…。
そこで今回は、「一般社団法人 あがり症克服協会」の鳥谷朝代(とりたに あさよ)さんにお話を伺ってみました!
【目次】
・「あがり症」ってなに?
・「あがり症」にはどんな症状があるの?
・緊張しやすい人の特徴
└自意識過剰
└ええかっこしい
└逃げ癖
・緊張って克服できるの?
└緊張克服法➀「腹式呼吸」
└緊張克服法➁「3首ユルユル体操」
・「SNSでの緊張」はこう克服しよう!
・まとめ
「あがり症」ってなに?
「今日はよろしくお願いします! さっそくですが、あがり症って普通の緊張状態とは違うんですか?」
「あがり症とは、対人場面での手の震えや赤面といった、身体症状が強く出ることの総称です」
「じゃあ『緊張しい』な人は全員あがり症?」
「いえ、あがり症かどうかの線引きって難しいんですよ。どんな人でも、人前で緊張することは大なり小なりありますから」
「まぁ緊張と無縁な人って存在しませんよね」
「症状がひどい場合、社会不安障害※の1つに分類されることがあります」
社会不安障害(SAD)……対人場面での緊張が日常生活にまで支障をきたす状態。例えば、誰かと会話をするのを極度に恐れ、家から一歩も出なくなった、などは社会不安障害と診断される。
「医学的な名称がつくと途端に怖い」
「“あがり”で、生活を困難にしている人もいるんだ…」
「ですので、緊張で悩んでいる→あがり症の可能性→社会不安障害の可能性みたいな感じで考えてください」
「『緊張なんて誰でもするんだから』と軽視せず、ひょっとしたらの可能性を考えたほうがいいと」
あがり症にはどんな症状があるの?
「あがり症の症状にはどんなものがあるんですか?」
「代表的な症状は、人前での声の震えや手の震えです」
「声の震え、すごくわかります。『自分の声が震えてる』って自覚すると、『震えてるのがバレないようにしなきゃ……!』と焦って、さらに震えちゃうんだよなぁ」
「あるある。あと『慣れれば緊張しなくなる』ってよく言われますけど、回数をこなすほど『やっぱりダメだった』っていう失敗体験が積もるから、いつまでも慣れない」
「お二人ともかなりつらそうですね。他にも、赤面症…視線恐怖症…書痙※…電話恐怖症…吃音症…多汗症……あとは、会食恐怖症なんかもありますね」
※書痙……人前で字を書くときに緊張して手が震え、文字がうまく書けなくなること。それ以外にも、人前で飲み物を注ぐ場面やお茶出しで持つ手が震えてしまうのも書痙に分類される
こちらは「あがり症克服協会」が掲載している『対人場面におけるあがり度のチェック表』。
当てはまる数が少なかったら軽度、多かったら重度ということではありません。この中の1つでも当てはまり、その状態に対して苦痛を感じている場合には、専門機関への相談を視野にいれてもいいかもしれません。
「あと、うちの協会の生徒さんに聞くと、緊張すると悲しい場面でもないのに涙が溢れてしまう…といった人もいらっしゃいます」
「あ~! わかる! 僕も感情が高ぶったとき、泣くつもりもないのに涙が出ちゃうんですよ」
「そうだったの!?」
「少し専門的な話をすると、人には『交換神経』と『副交感神経』の2種類の自律神経が存在します」
「人は激しい感情や強いストレスを感じたとき、『ノルアドレナリン』という神経伝達物質が多量に分泌されます。このノルアドレナリンが交換神経を刺激し、心拍数の上昇や体温の上昇、涙が流れる…いわゆる『あがってる』になるんです」
「つまり、緊張の正体は交換神経だったのか!」
「緊張のメカニズムが理解できると少し安心するな…」
「人前で緊張したときも『あ~、はいはい。いま、交換神経さんが頑張ってんスね~。乙~』って考えたら気が楽になるかも…?」
ちなみに僕には「異性が至近距離に来ると緊張する」という症状もあります(この写真も上半身が逃げようとしちゃってますね)
緊張しやすい人の特徴
「『緊張しやすい人の特徴』ってありますか?」
「あります。私の経験上、あがり症になりやすい人は、大きく分けて3つの特徴を持っています」
「➀自意識過剰 ➁ええかっこしい ➂逃げ癖 です」
「う……どれも自分に当てはまる…」
「耳が痛い……」
「この3つについて、もう少し深掘りしていきましょう」
緊張しやすい人の特徴➀「自意識過剰」
「“自意識過剰”って小馬鹿にした言い回しかもしれません。でも、緊張しやすい人は、自分が見られてることを必要以上に恐怖に感じてしまう傾向があります」
「わかる……」
「僕も……というか会社みたいな組織だと、自分の一挙手一投足を監視・評価されてるような気すらしている……」
「わかります。私も元・あがり症で、自覚したのは中学一年生の頃なんです。授業で教科書の本読みが当たったとき、突然声が震え出し、教科書を持つ手もブルブルと震えてしまったんですよね」
「教科書の本読みマジで地獄だった」
「あがってる自分をクラス中が笑ってるんじゃないか、と思うとさらに緊張して……」
「うわ~…気持ちがわかりすぎてキツイ」
「このように、あがり症の人は他人の視線を必要以上に意識してしまう。でも実際は、他人ってほとんど自分に興味が無いんですよね」
「それはわかってるつもりなんですが、自分では止められないんだよなぁ……」
「いまの話を聞いて思ったんですけど、あがり症になりやすい人って、過去になんらかの緊張体験をしているのも共通なんですか?」
「その可能性は大いにあります。社会人になって急に緊張しやすくなったという人も、振り返ってもらうと、学生時代に人前でなんらかの失敗体験(トラウマ)があった……というのは多いです」
「『学生時代』『視線』といえば、僕、人の目を見るのがめちゃくちゃ苦手なんですよ。人間の黒目にどうしても緊張しちゃうんです。ジッと見てると魂を吸われそうだし」
「カメラを知らない江戸時代の人かよ」
「目を見れないのは『対人恐怖症』に当てはまるかもですね。多いですよ」
「中学時代からずっとこうなんです。当時の僕はどうしたらいいのかわからなかった。で、苦肉の策で編み出したのが…」
ファサッ
「前髪を伸ばす」
「そういう理由だったの?!」
「前髪で目を隠せば、相手と目を合わす確率は減りますからね。いわば、僕の前髪は“視線のATフィールド”です」
「涙ぐましい…」
「たかや君の髪型、いままで『典型的なサブカルかぶれ厨』だと思ってた。ごめん……」
「馬鹿野郎」
緊張しやすい人の特徴➁「ええかっこしい」
「『ちゃんとやらなきゃ』と自分に必要以上のプレッシャーをかけてしまうのも特徴です」
「僕も、理想の自分にしなきゃ欲はかなり強いかも」
「その理想と現実のズレが、自分の首を絞めてしまうのよね」
「ちなみに、うちの協会を受講している生徒さんの主な年齢層は何歳くらいだと思います?」
「なんだろ。20代ぐらい?」
「そうだね。新卒で入社して、お得意様の前でプレゼンした時に初めてあがり症を自覚するってパターンが多そう」
「いえ、40代~50代の人が圧倒的に多いです」
「えー! 意外だ」
「なぜなら、管理職以上になると下からの視線が強くなるから」
「うわ、言われてみればめっちゃわかる!」
「年下のたかや君に言っておきたいんだけど、『歳を取ってるんだから完璧に仕事ができて当たり前でしょ?』っていうプレッシャー、半端ないから」
「うわ~、嫌だ~」
「若い頃なら『慣れてないんでうまくできませんでした、サーセンwww』で済んでたことが、歳を取ると『できて当たり前、できなければクソボケカス老害』と思われる」
「そういう恐怖を持っているかたが多いんですよ。『部下の前で失敗したらどうしよう』『この歳になって恥をかきたくない』っていう過度の緊張にさらされる回数が多くなるので」
「ひぇ…」
「もちろん若い人も受講されています。ただ、共通してみられるのは、仕事の場で『ちゃんとやらなきゃ』って思考パターンに陥っていることですね」
「やはり仕事は“悪”。この世から仕事を失くそう」
「求人メディアで滅多なこと言うな」
「あと、これは個人的に聞きたかったんですけど……僕、知らない人と仕事をする場合は全く緊張しないんです。インタビューする時とかほぼ緊張しない」
「確かに、ギャラクシーさんってインタビューの時はハツラツとしてますよね」
「でも、会社の同僚の前だとガッチガチに緊張してしまう。会社の仲間って味方のはずなんだから、リラックスして然るべきなのに……変ですよね?」
「いえ、それは“あがり症あるある”です」
「そうなの?!」
「初対面の人は、例え失敗してもその場限りの関係ですからね。だから緊張が生まれない」
「そうそうそうそう!」
「でも、同じ職場の人とは関係がずっと続きます。同僚や部下から『アイツは駄目なやつだ』と認定されたらどうしよう……と過剰に不安になる。“あがり症”の人にすごく多い考え方です」
「よかった。自分は異常じゃないんだ……それがわかっただけでも今回の取材に同行して良かった」
「人前で緊張する人は『まわりは敵』『あら探しをされる』といった思考になりがちなんですよね」
「わかりすぎる」
「逆に言えば、同じ職場の人であっても『その人とはその場限りの関係』と適度に思い込んだほうが余分な緊張は無くなるかもしれません」
緊張しやすい人の特徴➂「逃げ癖」
「緊張しやすい人の特徴……『逃げ癖』? “緊張”と“逃げ”って関係あります?」
「この“逃げ”には、『緊張している自分の姿を見ようとしない』という意味を込めています」
「あがり症の人に自分のスピーチを録画してもらい、後で映像を見て頂く『ビデオフィードバック』という方法があるんですが―」
「うわ~自分のスピーチとか見たくないな」
「ところが、実際に映像を見た生徒さんは、必ずと言っていいほど『あれ? 思ったよりも悪くないですね』という感想になるんです」
「「え~~~!」」
「あがり症の人って、長年の“あがり経験”で『どうせ自分のスピーチなんてズタボロでしょ……?』と自分自身にフィルターをかけているんです」
「確かに、自分のスピーチなんてズタボロ以外に予想できない」
「緊張しやすい人は自己否定感が強くて、『緊張している自分』『失敗している自分』が頭の中でどんどん膨らんでしまうんですね。その原因は、緊張している自分を見ないから」
「実際にビデオで客観視してみると、そこまでではないことが多いと」
「自分をちゃんと見ないと、人前で喋ったあとに『またダメだった』と思い込んで更にふさぎ込んでしまう。緊張しやすい人って、雪だるま式に自己否定を重ねているんですよ」
「うわ~!その例え、めちゃくちゃ良い!」
「これ、かなり良い表現ですね。たぶん世の中にこういう人は多いよ」
「緊張の本質ってコレかも」
緊張って克服できるの?
「緊張って克服できますか?」
「まずは簡単な方法として『フィジカルトレーニング』がおすすめです」
「フィジカル?! 緊張ってメンタルの問題なのに?」
「もしかして『メンタルを治すには筋トレだ』みたいな話ですか? 僕、その言説にはかなり懐疑的なんですけど……」
「いえ、もっと直接的な話です。緊張症状で一番多いのは『声の震え』です。なので、発声器官をトレーニングしようって話です」
「つまり、ボイトレ?」
「はい。緊張は身体に症状として表れてくれるんです。身体に出る以上、トレーニングで克服できるはず!というのが私の考えです」
「そう言われると説得力がありますね…」
緊張克服法➀「腹式呼吸」
「呼吸には『胸式(浅い)』と『腹式(深い)』の2種類があります。日常生活ではほとんど『胸式呼吸』が使われています」
「なるほど」
「でも、朝礼やスピーチといった場面で『胸式呼吸』を使うと、緊張も相まって、どんどん呼吸が浅くなってしまいます」
「スピーチで声がどんどん小さくなるのは、浅い呼吸と緊張のダブルコンボが原因か」
「声が出ないことを笑われてるんじゃないかと思って、さらに声が出なくなるってパターン、あるあるだわ」
「そこで、人前での会話時には『腹式呼吸』に切り替えられるように、日頃から訓練しておくといいです!」
腹式呼吸の方法ですが
➀まずは口から大きく息を吐き出し、お腹を凹ませる
➁そして鼻から大きく息を吸ってお腹を膨らませる
➂ ➀と➁を何回か繰り返す
ポイントとしては、お腹を凹ませるときに丹田(おへその下辺り)を意識すること。「帯」や「コルセット」がギュッと締まっていく…をイメージするとやりやすい!
この腹式呼吸に合わせて声を出すと…
/ おはようございます ╲
「おぉ~。声に張りが出てる。普段のたかや君の声とは全然違う!」
「ウソ…これが私…の声?」
「あと、姿勢を正すことも大事です。緊張しやすい人は姿勢が悪いのも共通です」
「姿勢も緊張と関係あるんだ」
「上半身が前傾していると、喉も引っ込んでいます。その状態だと、息もしづらいし、声もか細くなるんですよ。背筋を伸ばしたほうがいいのに、緊張すればするほど姿勢って悪くなっちゃう」
「すっげぇ合理的な説明で安心する」
先生おすすめの姿勢矯正法は「壁立ち」。
後頭部、肩甲骨、お尻、かかとを壁にぴったりとくっつけることで、真っすぐ立つことができる。この姿勢を覚えておき、普段から意識するようにしよう!
緊張克服法➁「3首ユルユル体操」
「緊張って、主に身体のどこに現れると思いますか?」
「声の震え、あとは手や足も震えます」
「そうです。緊張の震えって、首(声帯)、手首、足首といった『首』がつく部位に出ます」
「言われてみれば!」
「なので、スピーチの直前とかには『首』がつく部分を特に重点的にストレッチしておきたいですね。私たちは『3首ユルユル体操』と呼んでいます」
緊張は「首」がつく部位に現れる!
「緊張してきたな…」と感じたら『3首ユルユル体操』をしよう!
「SNSの緊張」はこう克服しよう!
「最後に、僕が一番悩んでいる緊張について相談してもいいですか?」
「もちろんどうぞ!」
「僕、Webライターなので、記事の告知なんかはTwitterですることが多いんですよね」
「はい」
「で、ツイートボタンを押す直前、吐きそうになるほど緊張するんです」
「そんなことある? ボタンをタップするだけじゃん」
「いや! 昨今のSNS界って殺伐としてて炎上は怖いし。『このツイートは伸びるかな……伸びないかな……』とか考えてたら、超~~~緊張するんですよ!」
「なるほど。SNSの緊張ですか…」
「Webライターに限らず、SNSに創作物を投稿する人も多いし、こういう緊張をする人は一定数いるはず! 今のところ僕の唯一の解決策は……」
「ツイートの直前、酒を入れてます」
「やばい…」
「SNSアル中じゃん」
「どうしたらいいですか?」
「う~ん…。とりあえず、アルコールに依存するのは良くないので、お酒は控えた方がいいかもしれません」
「はい。お酒はやめます」
「だからアル中の療法なんだよな」
「私も、数万人の協会員さんにメルマガを定期的に発信しています。でも、数万人の人に見られる…って考えたら、やっぱり緊張しちゃいますよね」
「そうです」
「なので、数万人の人が見ていると思うのではなく、一人に向けて発信する…と考えてみるのはどうでしょうか」
「うわ~~~! めちゃくちゃ良い言葉! 自分がツイートを届けたい誰か一人を想定して発信すると」
「この言葉、SNSに創作を投稿している人はかなり救われると思います!」
最後に金言をいただきました。
まとめ
▼今回、特に個人的に記憶に残ったこと▼
人間が生きていく上で、切っても切り離せない、緊張。僕と同じように“緊張しい”な人は、この記事で紹介した緊張の正体や克服法を思い出してくださいね!
そして、緊張で苦しんでいる…という人は、「あがり症克服協会」をはじめとした専門機関に相談してみるのもいいかもしれません。
今回の取材で紹介したことを、さらに詳しく書いてある鳥谷さんの著書もオススメです!
▼取材協力▼
『一般社団法人 あがり症克服協会』
公式HP : https://agarishow.or.jp/
<おわり>