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Channel: イーアイデムの地元メディア「ジモコロ」
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目指すは「教科書」で「若者の補助輪」。ウェブメディアの未来を本気で考えてみた

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目指すは「教科書」で「若者の補助輪」。ウェブメディアの未来を本気で考えてみた

2015年5月にスタートしたジモコロは、今年で6周年を迎えました。ここまで応援いただいた皆さん、ありがとうございます!

 

6周年を記念し、2021年5月13日にはオンラインでトークイベントが開催。

 

・メディア担当者の面白さとむずかしさと孤独
・ジモコロは”教科書”になりつつある?
・「人の人生を変えてしまう」ことの覚悟
・次の世代にバトンを渡したい

などのテーマを語りながら、7年目のジモコロについて考えた模様をお届けしますー!

 

【参加メンバー】

徳谷柿次郎……ジモコロ編集長。株式会社Huuuu代表。現在は長野市を拠点に、日本全国を飛び回って取材している。

藁品優子……ジモコロのスポンサーである「アイデム」所属。2018年からジモコロ担当をつとめる。

長谷川琢也……ヤフー株式会社所属。Huuuuとともに海の豊かさを考えるメディア『Gyoppy!』を立ち上げ、プロデューサーをつとめる。

くいしん……ジモコロには2017年からライター・編集者として関わる。『Gyoppy!』編集長。

 

7年目突入、ジモコロを続ける意義って?

「みなさん、今日はお集まりいただきありがとうございます! めちゃくちゃ急な声かけにも関わらず……」

「『オンラインでイベントやりましょ!』って柿次郎さんから連絡が来たの、ほんの2〜3日前でしたよね」

「びっくりしました(笑)」

「ほんとですよ(笑)。あ、藁品さん、はじめまして」

「そうか、お二人は初対面なんですね! ちょっと登場人物を整理しましょう。まず、ジモコロ編集長の柿次郎さん。そして、ジモコロのクライアント、アイデムの藁品さん」

「よろしくお願いします」

「そして今回、『一次情報を掘り起こすウェブメディアの続け方』ということで、Huuuuの関わるもう一つのウェブメディアから、はせたくさんもゲストで登場していると」

「ヤフーの長谷川、通称『はせたく』です。Huuuuさんとは2018年から『Gyoppy!』というメディアを一緒に運営しています」

 

2018年10月にヤフーのオウンドメディアとしてはじまった「Gyoppy!」
https://gyoppy.yahoo.co.jp/

 

「はい、そして僕が司会のくいしんです。ジモコロとGyoppy!両方に関わる人間として、今日はいろいろ聞いていきます」

「はい。ジモコロは現在、Huuuuとバーグハンバーグバーグの2社で記事をつくっていて。今日はHuuuu視点の話ですね」

「ということです! さて、2021年はコロナもあって、みんな目の前の生活が大変だし、移動も制限されてる。ウェブメディアの役割も相当変わってきてますよね

「めちゃめちゃ変化を感じてます! ウェブメディアの記事って電車内で読まれることも多かったはずだけど、電車に乗って移動する機会も減ってきてるし」

「映像媒体や音声メディアも増えてますよね〜。ライバルが多くなってる。そんななかで、ジモコロもGyoppy!も基本はテキストと画像のみですが」

「そうですね。でも取材に2~3日、つくるのに2週間〜1ヶ月かけてる記事がたった5分で、しかも無料で読める。しかも、ひとつの記事を読めば、そのテーマに関しておおよそ理解できる……。これって、けっこう豊かなことなんじゃないかと思うんですよね」

「たしかに。とくにローカル取材は時間がかかるからね。片道4~5時間かけて行く土地もありますし」

「はせたくさんは、Gyoppy!の取材でいろんなところに行ってくれていて……」

「そうだよ! クライアントの人間なのに(笑)」

「いつもありがとうございます(笑)! あとジモコロでいうと、『地方に住んでる人が検索したときに、アーカイブされた地元の情報がちゃんと出てくる』状態も意識してます」

「ほうほう、詳しく聞きたいです」

「たとえば10代~20代で、ちゃんとした情報に触れたい、けど本を買うほどではない……って人もけっこういるはず。その手前の情報を、ジモコロやGyoppy!では担保したいと思っていて」

 

福井・越前市で取材した「和紙文化」について、やわらかく解説するジモコロの記事
「わしらは「和紙」のために働いてるんだって! お金は和紙でできてるんだって!」

 

環境問題に一人ひとりがどうやって向き合うべきか、大学教授の鈴木寛さんに取材したGyoppy!の記事
『「5%変われば、社会は変わる。人は微力だが無力ではない」社会変革のプロが語る』

 

「専門的な部分はしっかり本で読んでほしいんですけど、その一歩手前の情報をやわらかく解説した記事が、ウェブでは5分で読める。今後10年経ったときに、そのとき読んだことが役に立つんじゃないかなと」

「地元にこんな人がいて、こんな面白い文化があるんだ!あるいは、今の日本にこんな課題があって、こういう議論があるんだ!と知ることで、いつか実際に行動するきっかけになるかもしれない、ってことですよね」

「ちゃんと記憶に残って、その人の行動をうながすような記事は意識してます」

「ジモコロの場合、さまざまな土地の魅力を知って、もっと地元や、今いる場所を面白がれるような記事が多いですよね。まず面白いと思うのが一歩目で、その先に実行動も生まれるんじゃないかなと」

「メディアの記事を通じて、種を蒔いてるような感じですね。いつか種が芽吹いて、行動に繋がっていくと」

「そうですね。まずは『地元や仕事って、面白いかも!』と思ってもらうことが、ジモコロの意義だと思ってます。その意義があるから、ここまでメディアが続いているんじゃないかな」

「なかなか6年も続かないですもんね」

「ほんとに。このご時世、情報をシェアしたり人のことを祝うエネルギーも減ってるでしょ? 今日だけはみんなエネルギーを出してください! 嘘でもいいんで!」

「いや、ちゃんとお祝いモードですから! 次のテーマいきましょう(笑)!」

 

記事は「人の人生を変えてしまう」もの

「続いては『メディア担当者の面白さとむずかしさと孤独』についてです」

「メディアの担当者さんって、編集とクライアント企業の間でいろんな苦労をされてるはず。今日は辛いことを全部出してもらって……」

「まずポジティブな話からいきましょう! はせたくさん、どんな面白さを感じてますか?」

「ウェブメディアならではの面白さはありますよね。Gyoppy!は海と環境に絞って取り上げてますけど、テレビとか新聞では、そうやってジャンルに特化しづらい。あえて尖ったテーマをやることで、むしろマニアックな情報や人が集まってきて、メディアに厚みが出るなと感じてます」

「なるほど。実際、Gyoppy!は水産関係の方たちにかなり読まれてるって聞きますね」

「あと、普通に生きてたら出会えない人や体験できないことに触れられるのは、メディア担当者のいちばんの役得かもですね」

「わかります! 私も担当者として関わっていて、自分自身の知識が増えたり、視野がすごく広がる面白さを感じます。日々上がってくる原稿を最初の読者として読むことができるので、こういう人や考え方があるんだ!って驚きがあるんですよね」

「藁品さん、原稿チェックしてくれたあとの感想が毎回長文で、めちゃくちゃ熱いんですよ! 制作側としては本当にうれしくて」

「いつも熱くてすみません……! 読者の皆さんにも印象に残りやすい媒体だと思ってるので、ちゃんと記憶に残って、その人の行動をうながすような記事を、とは意識してますね」

「実際、ジモコロを読んで取材先のお店へ来たり、その人に会いに来てくれた、みたいな反響を聞くことも多いですね」

「ただ、記事は形として残るからこそ、責任も重いと思っていて。『人の行動を促す』というのは、悪い方向へ動かしてしまう恐れもある。なので、すごく怖い仕事をしている、とも肝に銘じています」

「そうですよね……」

「読者や記事に出てくださった人の人生を少なからず変えてしまうこともあり得る。ジモコロはありのままを記事にするので、大丈夫かなと迷う場面もあって、なかなか難しいところですね」

「そこの悩みはありますね。Gyoppy!も環境問題や漁業の課題みたいな大きいテーマを扱うから、正解がないことも多くて」

 

東北大震災から10年の今年、ライターのヨッピーさんが福島第一原発を取材した記事

「そうですよね。ジモコロの場合、ライターの皆さんがちゃんと取材に行って、しっかり話を聞いたうえで記事にしてくれているので。ちゃんと向き合っているからこそ出せる記事がある、とは思っています」

「藁品さんのジモコロへの姿勢がすごい。最初からそこまでしっかり考えを持っていたんですか?」

「いえ、最初はまったく違う部署から来た、メディアの素人でしたよ! PVとUUの違いもわからないくらい(笑)。でも、ジモコロの記事は好きで、『この記事は本当にいい記事だから、みんなにも読んでほしい』と思っていたので、自然と考えるようになったんじゃないでしょうか」

「アイデムさんあってこそ、そして藁品さんあってこそのジモコロなので……。2〜3日前に突然イベントに誘うみたいなことは今後ないようにします!」

 

ジモコロは”教科書”?

「ジモコロはオウンドメディアとしては老舗の部類に入ると思うんですけど。どうしてこれまで続けてこれたと思いますか?」

「私のなかでは最近、ジモコロは”教科書”になりつつあるのかなと感じてます」

「「「教科書?」」」

「教科書って、内容はところどころ変わるけど、ずっと読み継がれていくじゃないですか。ジモコロの記事にもそれに近いものがあって、老若男女、誰でもいつでも見られるものなので、教科書的な価値が生まれてきているのかなと思います」

 

ものづくりの街「新潟・燕三条」の職人文化を伝える記事
『【職人】日本の鍛冶技術は世界レベル! 新潟燕三条の「モノづくり」がヤバすぎる』

 

「いいですね。『地元の教科書 ジモコロ』、次のコンセプトにしようかな(笑)」

「教科書になったら役割的にも絶対になくせない、なくならないし」

「……なんかいい話が続くので、編集チームへの文句とかないですか(笑)? この機会に言っちゃいましょう!」

「文句とかじゃないですけど……ジモコロはHuuuuもバーグハンバーグバーグも、編集側の中心メンバーが皆さん男性なんですよね。全体で見ても、女性は私だけで」

「しかも、気づけば皆、おじさんの年齢に。僕ももうすぐ39歳……」

「そうなんですよ! だから具体的にどうしろって言いにくいですけど(笑)」

「もうちょっと、女性や若者に向けたアプローチも考えたほうがいいのかもですね」

「Gyoppy!でも、どちらかというと読者は男性が多くて。海のことについて幅広い層に知ってもらいたいんですけど、あんまり女性や若者を引き込めてないんですよね」

「実際問題、漁業は男性が圧倒的に多い世界だったりしますし。そういうこともあって、僕は意識してGyoppy!では女性のライターさんにお願いしてますね」

「たしかに! そういうバランスは大事だね」

「とはいえ、若者や女性を変に意識しすぎるんじゃなくて、やっぱりジモコロ的な視線で『そこにいる人を深堀りしていく』のが一番じゃないですか? そうすれば、自然と多様性も生まれていくような」

その土地の面白いことをやってる人を、普通に取材していく。それでいいのかもしれませんね。ちなみに僕が気になってるのは『スナックのママ』です。地方のスナックのママ、面白いひとばかりなんですよ!」

「いいじゃないですか! ママのインタビュー読みたいです」

「あと、こないだ編集会議で『新大久保』を取材したいって話も出ましたね。渋谷・原宿に代わって若者の街になってるらしくて」

「うちの中2の娘も、いまは新大久保だって言ってました! 絶対やったほうがいいですよ」

「東京のローカル文化も、もっと掘りたいですね。初期にあった中目黒の旅荘の記事みたいな」

 

『【1泊2800円】中目黒の「旅荘 秋元」が想像を超えていた件』

 

「あ〜、いいっすね。あとは韓国のアイドルグループ『BTS』の人気がすごいですけど、『推し』についての記事もやりたいです。あの『推し』への感情や、好きになったものへの衝動の強さがどこから来るのか、めちゃくちゃ気になっていて」

「ちゃんと大学でアイドル論を研究してる方とかもいるので、そこに絡めて話をするのも面白そう!」

「藁品さんはやっぱり、どちらかというとオタク気質ですよね」

「急にやめてくださいよ(笑)! 私はオタクではありますが、今日はまじめにいち社会人として出てるんですから」

「藁品さんのそういう面も見せていきましょう!」

 

次の世代の”補助輪”になれたら

「あと、皆さん言い残したことはないですか?」

「この場で言うことでもないけど、僕は早く次の編集長を見つけたいですね」

「もう2年くらい言ってませんか?」

「誰も辞めさせてくれないんですよ(笑)。『地方を面白く見つめる』『東京の仕事を面白く捉える』ことに向き合うには、新たな視点が絶対に必要で。僕ももはや、二周目、三周目の感覚なので」

「ジモコロで47都道府県も制覇しちゃったもんね」

「メディアは自分たちだけのものじゃないって感覚はあるんですよね。よりよい形で持続させるために、いつでも次の世代にバトンを渡す姿勢は常に持っておきたいなと」

「まあ、たしかに。『今後も関わりつつ、一線からは降りる』みたいな選択肢は持っておいてもいいのかなと思います」

「僕自身、『ジモコロ編集長』って肩書を名乗ることで、いろんな覚悟が生まれたり、新たな人格が形成された感覚はあって。その体験をもっと早く下に降ろしたほうが面白いんじゃないかな、という気持ちもあります」

「メディアに関わる人間は、どんどん入れ替えて若返っていったほうが、空気が循環していいのかもしれませんね」

「SDGsが叫ばれてますけど、貧困やジェンダー、気候変動なんかの問題で、いちばん割りを食ってるのは今の10~20代じゃないですか。彼らの『僕たちの世代はこう思うんです』『こうしたいんです』という気持ちを汲むのが、本来のおじさんの仕事だと思うんです」

「それは超思いますね」

「おじさんがしたいことより、若い人たちのやりたいことを聞いて形にする”補助輪”的な役割を果たしたい。『若い世代の視点や価値観を、メディアを通して世に届けてリアクションを得る』のは、ジモコロのひとつの大きな役割だと思っています」

「ということは、柿次郎さんが島耕作みたいに『ジモコロ会長 柿次郎』になる日も近い…?」

「会長なのかなー(笑)! とりあえず7年目のジモコロは、次世代を意識して取り組みを仕掛けていきますよ! 今日はありがとうございました」

 

ということで、7年目のジモコロでは『インスタマガジン』が始動! 秋頃のオープンに向けて、絶賛準備中です。ご期待ください。

 

それでは皆さん、引き続きジモコロをよろしくお願いします!

 

構成:夜夜中さりとて


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